オールジェンダートイレ:日本の現状と課題

近年、多様性への理解が深まる中で、性別に関わらず誰もが利用できるオールジェンダートイレへの注目が高まっています。しかし、その導入には課題も存在し、新宿・東急歌舞伎町タワーの事例はその象徴と言えるでしょう。本記事では、オールジェンダートイレを取り巻く現状と課題、そして未来への展望について考察します。

東急歌舞伎町タワーの事例から学ぶ

東急歌舞伎町タワーは、SDGsの理念に基づきオールジェンダートイレを導入しましたが、わずか4ヶ月で廃止に至りました。世界トイレ協会理事の白倉正子氏は、この事例を「日本におけるオールジェンダートイレの初の実験場」と表現しています。ニューヨーク州では男女共用トイレが義務化され、北欧諸国では男女別の概念が希薄であることを考えると、歌舞伎町タワーの取り組みはグローバルな視点からは自然な流れだったと言えるかもしれません。しかし、日本の現状を鑑みると、時期尚早だったと言えるでしょう。

歌舞伎町のような繁華街のトイレのイメージ歌舞伎町のような繁華街のトイレのイメージ

設計上の問題点

大阪大学トイレ研究会のメンバーは、歌舞伎町タワーのオールジェンダートイレの設計上の問題点を指摘しています。個室の外に手洗い場がある構造や、男女別トイレの選択肢がなかったことが、利用者の不安を増長させた要因の一つと考えられます。

個室トイレのイメージ個室トイレのイメージ

対照的に、大阪大学・新箕面キャンパスのオールジェンダートイレは、手洗い場も含めて全て個室に完備されており、さらに男女別トイレも併設されているため、利用者は状況に応じて選択することができます。オールジェンダーという選択肢を増やすこと自体は肯定的ですが、同時に既存の選択肢を奪ってしまうことは避けるべきです。

男女別トイレの歴史と背景

近代以前はトイレは男女共用が一般的でした。女性用トイレの登場は、女性の社会進出が進んだ1800年代後半に始まり、1887年にマサチューセッツ州で世界初の男女別トイレに関する規制が可決されました。これは男女平等のためというよりも、公共の場における女性保護の目的が強かったと言われています。

未来への展望

オールジェンダートイレの普及には、利用者の安全と安心を確保するための配慮が不可欠です。個室化の徹底、清潔さの維持、防犯対策の強化など、ハード面での改善に加え、利用者への適切な情報提供や啓発活動といったソフト面での取り組みも重要です。多様なニーズに対応できるトイレ環境の実現に向けて、社会全体での議論と協力が求められています。