韓国戒厳令騒動:尹大統領、弾劾訴追可決と職務停止の真相

韓国で激震が走った。2024年12月14日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案が国会で可決、大統領は職務停止となった。そのわずか3日前の夜、尹大統領は突如として44年ぶり、そして1987年の民主化以降初めてとなる「非常戒厳令」を発令したのだ。この前代未聞の事態に、韓国社会は大きく揺れ動いている。

戒厳令発令の背景:金建希夫人への疑惑と国民の反発

戒厳司令部は設置されるやいなや、あらゆる政治活動の禁止、メディアの統制、そして違反者への令状なしの逮捕・捜索を宣言。武装した兵士が国会に突入する映像も流れ、国民の間に混乱と不安が広がった。10万人以上もの民衆がソウルの国会周辺に集結し、戒厳令への抗議の声を上げた。

altaltソウル国会周辺に集結した抗議デモの参加者たち。戒厳令への強い反発が見て取れる。

この戒厳令発令の背景には、尹大統領夫人である金建希(キム・ゴンヒ)氏への疑惑が渦巻いていることが挙げられる。最大野党「共に民主党」だけでなく、与党「国民の力」からも金夫人への調査を求める声が上がり、尹大統領の求心力低下が顕著になっていた。窮地に追い込まれた大統領が、事態打開のために戒厳令という“禁じ手”に打って出たとの見方が強い。著名な政治アナリスト、李氏(仮名)は「戒厳令発令は、大統領の焦りと政権運営の行き詰まりを露呈した」と指摘する。

弾劾訴追可決:支持率低迷と政権への逆風

しかし、この強硬策は裏目に出て、尹大統領は野党から弾劾訴追を突きつけられる結果となった。12月7日、与党議員の多くが棄権したため弾劾訴追案は否決されたものの、韓国政界の混乱は収束する気配を見せない。

尹大統領は7日の談話で、国政の最高責任者としての「切迫感」が戒厳令発令の理由だったと釈明した。この「切迫感」の正体とは、一体何だったのか。

最も大きな要因は、大統領の支持率の低迷だろう。就任直後は高い支持率を誇った尹大統領だが、就任から2ヶ月ほどで不支持率が支持率を上回る逆転現象が発生。2023年5月には支持率30%台前半、不支持率60%程度まで落ち込み、2024年4月の総選挙での与党敗北を経て、11月下旬には支持率は19%まで低下していた。

altaltソウル市内。戒厳令発令前の緊迫した雰囲気が漂う。

韓国政治経済専門誌の編集長、朴氏(仮名)は「支持率の低迷は、国民の政権への不信感を如実に表している。今回の戒厳令騒動は、その不信感をさらに深めたと言えるだろう」と分析する。

今後の韓国情勢:不安定な政治と国際情勢への影響

今回の騒動は、韓国の政治、経済、安全保障に大きな不安定要素をもたらした。北朝鮮情勢への影響も懸念され、極東地域の緊張が高まる可能性も否定できない。世界経済への悪影響も避けられないだろう。

韓国の今後の政局は予断を許さない状況だ。国民の不安を取り除き、信頼回復への道を模索することが、尹政権にとって喫緊の課題となっている。