参院埼玉選挙区補欠選挙(10月27日投開票)をめぐり、上田清司前埼玉県知事が20日、無所属で出馬する方針を正式表明した。選挙戦で注目されるのは、7月の参院選で躍進したれいわ新選組の対応だ。党内には早期の衆院解散の可能性も見据え、存在感を示すために独自候補の擁立論があるが、上田氏に対抗馬を立てれば野党共闘の足並みを崩しかねない。埼玉を地盤とする立憲民主党の枝野幸男代表は、れいわの山本太郎代表がどう決断するか神経をとがらせている。
補選は8月の知事選で初当選した大野元裕氏の参院議員辞職に伴うもの。知事選では、共産党を含む野党共闘が実現し、与党系候補に完勝する原動力となった。立民や国民民主党は、今回も上田氏を野党統一候補に位置づけ支援するが、山本氏は、この共闘に乗るかどうか悩んでいる。
「埼玉の補選は見えにくい。どの政党にも『落とすのはまずい』という考え方があり、なかなか手が出せない部分はある」
山本氏は12日の記者会見で、補選の対応に複雑な表情を浮かべた。独自候補擁立に消極的かと思いきや、「手を突っ込めるのは私たちぐらいかな」とも語り、揺れる心情ものぞかせた。
れいわの関係者は「選挙をするたびに疲弊していく。できれば手を突っ込みたくない」と漏らす。
相乗りを簡単には決断できない別の事情もある。野党には安倍晋三首相が年内の衆院解散に踏み切るとの警戒感が強く、その場合結成間もない同党にとって10月の補選は衆院選前に浸透を図る数少ない機会となる。一方で、他の野党とともに上田氏を推せば、7月の参院選で示したような独自性の発揮は難しくなる。
ただ、独自候補を立てた場合、先の埼玉、岩手両県知事選で奏功した野党共闘の流れに水を差しかねない。補選で与党が対抗馬を立てた場合には、足並みの乱れが与党を利することにもつながる。
斬新な手法で参院選の注目を一身に集めたれいわだが、政党支持率は伸び悩んでいる。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が9月14、15両日に行った合同世論調査で、同党の支持率は2・2%。前月から微増したが、自民党の39・5%、立民の8・6%に水をあけられている。
党の存在感をアピールする上で補選が持つ意味は大きく、山本氏はぎりぎりまで政治情勢を注視する構えだ。(中村智隆)