社員の健康が会社の健康にもつながる―。精密部品切削加工の平林精機(長野県諏訪市)社長の平林真理子さん(59)=諏訪市=は、社員に朝食を提供するようになって15年近くになる。社員一人一人を「同志であり、家族」と考え、健康に配慮した企業運営に力を入れる。
具だくさんの温かい朝食
「今日は寒いからショウガを多く入れてみた。風邪をひかないようにね」。気温が0度まで冷え込んだ19日、午前8時の朝礼で社員にソーセージや白菜、エノキ、ブロッコリー、ニンジンなど多くの具を煮込んだポトフを配った。ふわっと湯気が立ち上がる。忙しくて朝食が取れない朝もあるという40代の男性社員は「体が温まり、仕事の活力になる」と喜んだ。
自ら握るおむすびが定番
朝食を出しているのは月曜から金曜までの毎朝。自ら握るおむすびが定番で、みそ汁や中華スープなど汁物も振る舞う。毎週火曜日には提携する市内のパン店からパンが届く。社員は一人3種類ずつ受け取り、朝礼時や午前10時の休憩時などそれぞれのタイミングで食べる。
社員12人に提供、経費は月8万円
朝食は社員12人に提供しており、月約8万円の経費がかかる。工場経営は決してゆとりがあるわけではないが、それでも「社員の健康には代えられない」と話す。自身の不在時には即席のみそ汁やスープなどを出す。
「栄養を取ってもらうことで、生産性も上がっていると思う。笑顔で生き生きと仕事をしてくれている」
夜勤を経験して気付いた大切なこと
取り組みは2010年から始まった。夜勤明けの社員の体調を気遣い、おかかのおにぎりを提供したのが始まりだ。当時、受注増に合わせ、工場を24時間稼働にした。自身も夜勤のシフトに入る中、「夜勤は体調の維持や心のバランスを保つのが難しい。健康でなければ効率良く仕事ができない」と感じた。
「健康経営」のための決断
「健康経営」の大切さを再認識。夜勤制を取りやめる決断をし、一部の社員の勤務時間を夜間と早朝にずらすことで生産性を維持した。忙しさや早い出勤時間から朝食を取れない社員がいたため、朝食の提供を続けることとした。