シリア情勢:アサド政権崩壊でイラン500億ドル損失の危機、巨額資金のロシア流出も明らかに

アサド政権の崩壊危機が深刻化する中、イランは巨額の損失に直面し、アサド一族による資金流出疑惑も浮上しています。この記事では、複雑化するシリア情勢と、それに伴うイランの経済的損失、アサド一族の資金隠匿疑惑について詳しく解説します。

イラン、アサド政権崩壊で500億ドルの損失危機

英紙サンデー・タイムズによると、イラン政府の文書から、シリアが石油や軍需品などでイランに返済すべき債務が500億ドルに達することが明らかになりました。アサド政権の崩壊により、イランはこの巨額の負債を回収できない可能性が高まっています。シリア国民のイランに対する反感も強く、経済も崩壊状態にあるため、返済の見込みは薄いとされています。

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イラン野党連合の報道官は、「過去10年間でアサド政権に500億ドル以上を提供したが、全てが消えた」と政府を批判。イラン国民からも、巨額の資金援助に対する疑問の声が上がっています。セントアンドルーズ大学イラン研究所のアリ・アンサリ所長は、「シリアへの介入の是非をめぐり、イラン国内で大きな議論が巻き起こっている」と述べています。

アサド政権、巨額の現金をロシアに空輸か

フィナンシャル・タイムズは、アサド政権が2018~2019年に中央銀行を通じて2億5000万ドルもの現金をモスクワのブヌコボ空港に空輸し、ロシアの銀行に入金した記録を入手したと報じました。現金は100ドル札と500ユーロ札で、重さにして2トンにも及んだとされています。

この現金空輸は、アサド政権がロシアの軍事支援に依存する一方で、一族の財産をロシアに隠匿していた疑いを深めるものです。フィナンシャル・タイムズは、「ロシアの軍事支援や、ロシア企業のシリアリン酸塩供給網への参加など、ロシアとシリアの関係は劇的に深まっている」と指摘しています。

アサド一族の隠匿財産、最大120億ドルか

国際社会は、アサド一族が隠匿した財産をシリア国民に返還するため、追跡調査を開始しています。ウォール・ストリート・ジャーナルは、アサド一族が国営企業の独占や麻薬密売などで資金を蓄積したと推定。米国務省の2022年の報告書を引用し、隠匿財産の規模は最大120億ドル、最小でも10億ドルに上ると報じています。

アサド一族は、ロシア、ドバイ、フランスなどに不動産を保有していると言われています。国際犯罪に対抗する弁護士団体所属のトビー・キャドマン氏は、「アサド一族は金融犯罪の専門家でもあった」と指摘。アサド大統領の妻アスマ夫人は、投資銀行JPモルガン出身という経歴も持っています。

ホワイトハウスの元当局者アンドリュー・タブラー氏は、「アサド一族は亡命に向けて周到な準備を進めており、資金洗浄のための時間も十分にあった。国際的な追跡調査は避けられないだろう」と述べています。

シリア情勢は、イランの巨額損失、アサド一族の資金隠匿疑惑など、複雑な様相を呈しています。今後の展開が注目されます。