米国、ウクライナへの一部武器供与を停止 ウクライナはロシアの攻撃拡大を懸念

米政府が7月1日、ウクライナへの武器供与の一部停止を発表したことを受け、ウクライナは翌2日、この決定がロシアによるウクライナでの戦争長期化を招く可能性があると懸念を表明しました。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、現在アメリカと「供与に関するすべての詳細を明確にしている」段階だと述べています。

ウクライナ外務省は、いかなる武器供与の遅延も「侵攻者に戦争とテロの継続を促すだけで、平和を求めることにはならない」と強く警告し、特にウクライナの防空システム強化の必要性を強調しました。外務省は2日、キーウ駐在の米外交官を招集し、この件について協議を行いました。ウクライナでは現在も、ロシアによるミサイルやドローンを使った夜間の攻撃がほぼ毎晩続いています。

ウクライナ国防省の見解と米側の説明

一方、ウクライナ国防省は、アメリカからの武器供与に関する「停止または見直し」についての正式な通知は受け取っていないとしています。国防省は、断片的な情報に基づく憶測を避けるよう呼びかけました。しかし、同省は声明の中で、戦争を終結させる唯一の道は、「侵攻者に対して一貫した共同での圧力をかけ続けること」だと述べています。

米国がウクライナに対する一部の武器供与を停止した背景について、ホワイトハウスのアナ・ケリー報道官は1日、「国防総省による対外軍事支援の見直しを受け、アメリカ合衆国の国益を最優先するために下された決定だ」と説明しました。2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始して以来、米国は何百億ドル規模の軍事支援をウクライナに提供してきました。しかし、一部の米政府関係者からは、国内の兵器備蓄が逼迫していることへの懸念が表明されていました。

ウクライナ情勢に関する画像、ロシアの攻撃拡大懸念を示すウクライナ情勢に関する画像、ロシアの攻撃拡大懸念を示す

ロシアの反応と戦況への影響

今回の米国の武器供与削減のニュースに対し、ロシア政府は歓迎の意を示しました。ロシア側は、ウクライナに運び込まれる武器が減ることは、紛争の早期終結につながると主張しています。クレムリン(ロシア大統領府)のドミートリー・ペスコフ報道官は記者団に対し、「ウクライナに届けられる武器の数が少ないほど、特別軍事作戦の終了は近くなる」と述べました。

ロシアは現在、ウクライナ領土のおよそ20%を支配しており(2014年に一方的に併合したクリミア半島を含む)、ロシア軍は多大な損失を被っているものの、ここ数カ月、ウクライナ東部で徐々に前進を続けていると見られています。ロシアはルハンシク州を完全に掌握したと主張しており、南東部のドニプロペトロウシク州でも領土を制圧したと発表しています。

ウクライナ関係者の強い懸念

ウクライナ与党の議員であるフェディール・ヴェニスラフスキー氏は、今回の米国の決定について、「厳しいものであり、ロシアがウクライナに対してテロ攻撃を続けている状況下で発表された。(中略)これは非常に好ましくない状況だ」と懸念を表明しました。

また、AFP通信が伝えたところによると、ウクライナ軍の関係者は、「ウクライナは米国の武器供給に深刻に依存している。ヨーロッパ諸国は最善を尽くしてくれているが、米国の弾薬なしでは非常に難しいのが現状だ」と話しており、前線での影響を懸念する声も上がっています。

今回の米国の決定は、ウクライナの防衛能力、今後の戦況、そして国際的な支援体制にどのような影響を与えるのか、世界が注視しています。


出典: BBC News / AFP通信