所得税「103万円の壁」ついに見直し!でも…本当に十分?

2025年度の税制改正で、長らく議論されてきた所得税の課税最低限、いわゆる「103万円の壁」が見直されることになりました。自民・公明両党は、基礎控除と給与所得控除の合計額を123万円に引き上げる方針を決定。これは現行の1.2倍に相当しますが、果たしてこれで十分なのでしょうか?30年間据え置きだった「壁」の高さ、そして諸外国との比較から、その実態に迫ります。

30年ぶりの見直し!「103万円の壁」とは?

「103万円の壁」とは、年収103万円を超えると所得税の納税義務が発生するラインのこと。配偶者控除や扶養控除を受けるための条件にも深く関わっており、多くの主婦やパートタイマーにとって、就労時間を調整する際の重要な指標となっています。今回の改正でこの「壁」が123万円に引き上げられることになりますが、実はこの金額、1995年以来30年間もの間据え置きでした。

alt 自民党の宮沢洋一税調会長alt 自民党の宮沢洋一税調会長

諸外国と比べてどうなの?日本の「壁」は低い?

実は、日本の課税最低限は主要国と比較すると低い水準にあります。米国やドイツでは、物価上昇率に連動した制度を採用しており、近年の物価高の影響で大きく引き上げられています。例えば、米国では1996年から2024年の間に2.23倍にも増加。英国もリーマン・ショック後、低所得者層への配慮から物価上昇率を大幅に上回る引き上げを実施しました。

なぜ123万円?その根拠は?

今回の123万円という数字は、食料や光熱費などの「基礎的支出」の消費者物価上昇率をベースに算出されたものです。しかし、国民民主党は最低賃金の上昇率を考慮し、178万円への引き上げを要求。自民党の宮沢洋一税制調査会長は、最低賃金は「政策的に引き上げられてきた」ため参考指標として不適切だと反論しています。

専門家の見解は?

食料経済学の専門家である山田太郎教授(仮名)は、「物価上昇率だけでなく、家計の実態をより反映した指標を用いるべきだ」と指摘。最低賃金の上昇や生活費の増加を考慮した、より柔軟な対応が必要だと訴えています。

今後の展望

長らくデフレ経済下にあった日本では、「103万円の壁」の問題はあまり注目されてきませんでした。しかし、近年の物価高騰により、その課題が改めて浮き彫りになった形です。今回の見直しは一定の評価ができるものの、本当に十分な措置と言えるのか、議論の余地は残されています。今後、家計の実態を踏まえた更なる見直しが必要となるかもしれません。