2024年の年間ベストセラー4位(ビジネス書単行本/トーハン調べ)に輝いた話題の書『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』は、ビジネスパーソンのみならず、なぜか子供たちまでもが夢中になる異例のヒットを記録しています。この書籍が扱う論理的思考問題とは、知識や複雑な計算は一切不要で、「考える力」のみが問われるものです。現代社会で求められる「思考力」を鍛える最高の知的トレーニングとして注目を集める中、人間より賢いとされるAI(ChatGPT 4o)は、果たしてこのような論理的な謎を解明できるのでしょうか?
思考力を鍛えるベストセラー本『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』の表紙
「考える力」を育む論理的思考問題の魅力
論理的思考問題は、小中学校の受験問題、就職試験、さらにはGoogleやApple、Microsoftといった超一流企業の採用試験でも出題されるなど、その重要性が広く認識されています。これまでの「正解」が通用しない不確実な時代において、状況を正確に把握し、論理的に推論する「思考力」は不可欠な能力です。本書が「親が買ったら、先に子供が読んでいた」「ゲームばかりしている兄弟が取り合っていた」といった感想が寄せられるほど、大人だけでなく子供たちの知的好奇心をも刺激しているのは、論理的思考が持つ本質的な面白さを証明しています。
AI(ChatGPT 4o)が挑む「2本の線香」問題
「人が創り、人が解いてきた」論理的思考問題を、最先端のAIはどこまで解けるのか?今回、書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から、以下の有名な問題を選び、AIモデル「ChatGPT 4o」に出題しました。論理的思考問題の定義として、「知識や難しい計算は不要で、問題文を読んで論理的に考えれば答えが出せる」「必要な情報は、問題文に書かれていることのみ」であることをAIに伝えた上で、出題を実行しました。
問題:「2本の線香」
ここに2本の線香がある。
どちらもきっかり1時間で燃え尽きる。
ただし、線香の燃える速度は一定ではない。
線香の9割が10分で燃え、残りの1割が50分かけて燃え尽きることもある。
この線香2本を使って、45分を計りたい。
どうすればいいだろう?
一見すると単純ながら、燃焼速度が不均一という条件が思考を深めるこの問題に対し、AIはどのような解答を導き出したのでしょうか。
AIが示した「2本の線香」の完璧な解答プロセス
ChatGPT 4oは、この「2本の線香」問題に対し、論理的で明確な解法を提示しました。AIはまず、問題の核心である「燃焼速度が一定でない」ため、線香の長さを半分にしても時間が半分になるとは限らない点を正確に把握しています。
AIが導き出した解法は以下の通りです。
■ 解法:火をつけるタイミングと本数を工夫する
【手順】
- 1本目の線香の両端に同時に火をつける。
- 同時に、もう1本(2本目)の線香の片端だけに火をつける。
- 1本目が燃え尽きるのを待つ。 → これには30分かかります。線香を両端から燃やすと、燃える速度が不均一であっても、必ず全体の半分の時間(60分 ÷ 2 = 30分)で燃え尽きるからです。
- 1本目が燃え尽きたタイミング(30分経過時)で、2本目の反対側にも火をつける(=両端燃焼に切り替える)。
- 2本目がその後、15分で燃え尽きる。 → なぜなら、この時点で2本目の線香は残り30分相当(片側燃焼の場合)ですが、両端から燃やすことで、その半分の時間(30分 ÷ 2 = 15分)で燃え尽きるためです。
■ 結果:
30分(1本目が燃え尽きるまで)+15分(2本目の残りを両端燃焼)=45分
AIは、見事に45分を正確に計測する手順を導き出しました。
結論:AIの思考と人間の学び
今回の検証では、AIが高度な論理的思考問題を解決する能力を明確に示しました。与えられた情報から論理的に推論し、最適な解決策を見つけ出すその能力は驚くべきものです。しかし、このような思考問題に自ら挑戦し、試行錯誤するプロセスこそが、AI時代において人間が持つべき「考える力」を養う上で極めて重要です。知識の有無ではなく、柔軟な発想と論理的推論が問われる問題に挑戦し続けることは、私たちの思考力を高める最高のトレーニングとなるでしょう。