政府は1日午前、過労死・過労自殺の現状や国が進める防止対策をまとめた令和元年版の「過労死等防止対策白書」を閣議決定した。主要業種では運輸業が平成30年度の過労死を含む脳・心臓疾患の認定件数で最多となり、精神疾患も多かった。また、過重労働が顕著な業種として新たに建設業とメディア業界を分析。建設業の現場監督に自殺が多いことが浮かんだ。
今年4月に始まった働き方改革で、建設業とトラックなどの自動車運転業務は罰則付きの時間外労働上限規制の適用を5年間猶予された。来年の東京五輪・パラリンピックを巡り、建設、運輸業は関連施設工事や期間中の渋滞緩和に向けて厳しい労働環境が続く可能性があり、対応を迫られそうだ。
白書によると、業種別では「運輸業、郵便業」の脳・心臓疾患の認定件数がトップの94件。職種別でもトラックやタクシーの運転手など「自動車運転従事者」が最多の85件を占めた。職種別の過労自殺などを含む精神疾患の認定件数は自動車運転従事者が35件で、「一般事務従事者」(41件)、「営業職従事者」(38件)に次ぐ多さだった。
白書では平成22年1月~27年3月、建設業とメディア業界で過労死など労災認定された内容を分析。建設業では脳・心臓疾患と精神疾患が計311件労災認定された。施工管理をする現場監督は59件の精神疾患が認定され、未遂を含む自殺はうち30件。原因は長時間労働が最多だった。メディア業界の過労自殺は全員が20代だった。
精神疾患の原因の男女別調査も実施。女性のハラスメント被害の割合が男性より目立った。
国は週労働時間が60時間以上の雇用労働者の割合を20年までに5%以下とする目標を立てている。18年は前年より0・8ポイント減の6・9%だった。