韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と韓悳洙(ハンドクス)首相が相次いで弾劾(だんがい)訴追される異例の事態を受け、崔相穆(チェサンモク)経済副首相兼企画財政相を大統領権限代行とする暫定体制が始動した。野党の圧力が続く中、崔氏は1人で大統領と首相、もともとの自らの担当という「3役」をこなすという厳しい対応を迫られており、多難なスタートとなりそうだ。
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「一寸先も見えない政治的不確実性が、国家の安全保障を脅かしている」。崔氏は27日、国家安保会議を開き、北朝鮮の挑発に備えて万全の対応をとるなどの指示を出した。聯合ニュースによると、趙兌烈(チョテヨル)外相が駐韓米大使と、外交省幹部らが日本の駐韓大使や中国の大使代理と、それぞれ電話で協議。韓国政府としては、暫定体制に対する不安を取り除きたい考えだが、容易ではない。
崔氏は外交・安保に加えて、行政や経済など全ての分野で「司令塔」となる。大統領と首相が職務停止となったほか、国防相や、警察を所管する行政安全相も空席となるなか、政権運営を疑問視する見方もある。
さらに、進歩(革新)系最大野党・共に民主党は、尹氏の弾劾審判を担う憲法裁判所の裁判官の欠員補充をめぐる問題で圧力を強めている。尹氏の罷免(ひめん)を確実にしたい野党側は速やかな補充を求める一方、崔氏は韓氏と同様、裁判官の任命に否定的な立場だとみられている。
共に民主党は、崔氏が韓氏と同じ判断を繰り返せば、さらなる弾劾訴追も辞さない構えだ。(ソウル=太田成美)
朝日新聞社