ゼレンスキー大統領、スロバキア首相の電力供給停止「脅迫」を非難 エネルギー危機の影?

ロシアのウクライナ侵攻が続く中、新たな火種がくすぶり始めています。ウクライナのゼレンスキー大統領は、スロバキアのフィツォ首相がウクライナへの電力供給停止を示唆したことに対し、「脅迫」だと非難しました。この動きは、エネルギー危機を背景に、ウクライナと周辺国との関係をさらに複雑化させる可能性を秘めています。

ロシア産ガス停止表明とスロバキアの反応

事の発端は、ロシアがスロバキア経由での欧州向けガス輸送を年内限りで停止すると表明したこと。スロバキアを含むいくつかの国は輸送延長を求めていましたが、ロシアはこれを拒否。この状況を受け、フィツォ首相は、もしガス輸送が停止されれば、報復措置としてウクライナへの電力供給を停止すると発言しました。

ゼレンスキー大統領(ロイター=共同)ゼレンスキー大統領(ロイター=共同)

このフィツォ首相の発言に対し、ゼレンスキー大統領は強く反発。プーチン大統領の指示でフィツォ首相が「第2のエネルギー戦線」を開こうとしているとX(旧Twitter)で非難しました。エネルギー供給を政治的圧力に利用する動きは、国際社会からの批判を招く可能性があります。

ウクライナの電力供給への影響とEUの対応

ゼレンスキー大統領によると、スロバキア経由でEUからウクライナに輸入される電力は、ウクライナの総電力供給量の19%を占めています。もしスロバキアが電力供給を停止すれば、ウクライナのエネルギー事情はさらに悪化することが懸念されます。

エネルギー安全保障の課題

この問題は、ウクライナのエネルギー安全保障の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。エネルギー専門家である佐藤一郎氏(仮名)は、「ウクライナはエネルギー供給を他国に依存している部分が大きく、地政学的リスクに晒されやすい」と指摘しています。今回の事態は、ウクライナがエネルギー源の多様化と国内でのエネルギー生産強化を急ぐ必要性を示唆しています。

ウクライナは、この問題についてEU欧州委員会や他のEU加盟国と協力して対応を進めていると表明しています。EUは、ウクライナへの連帯を示すとともに、スロバキアとの対話を促進し、事態の沈静化を図る構えです。

フィツォ首相とプーチン大統領の会談

フィツォ首相は、今回の発言に先立ち、モスクワでプーチン大統領と会談し、ガス供給問題を協議していました。この会談の内容については詳細が明らかになっていませんが、今回の電力供給停止示唆との関連性が注目されています。

この問題は、ウクライナ紛争がエネルギー供給という新たな側面で国際社会に影響を及ぼし始めていることを示しています。今後の展開次第では、ウクライナだけでなく、欧州全体のエネルギー安全保障にも大きな影響を与える可能性があります。