韓国南西部の務安国際空港で起きた旅客機墜落事故。179名もの尊い命が奪われたこの悲劇を受け、事故原因の究明が急ピッチで進められています。エンジンへのバードストライクが有力視される中、専門家からは空港の構造自体に疑問の声が上がっています。滑走路外のコンクリート壁が、被害を拡大させた可能性が指摘されているのです。
滑走路外壁の存在意義に疑問符
元英空軍パイロットで航空評論家のデービッド・リアマウント氏は、英スカイニューズ・テレビのインタビューで、事故機が激突したコンクリート壁の存在を問題視。「壁がそこにある必要はなかった」と断言しました。リアマウント氏によれば、胴体着陸後の機体は、壁がなければ隣接する畑まで滑走し、減速・停止できた可能性があるとのこと。空港周辺には十分なスペースがあったにもかかわらず、滑走路外に硬い構造物が設置されていたことが、被害拡大につながったと指摘しています。
韓国南西部の務安国際空港で起きた事故で、壁に激突して大破した旅客機
リアマウント氏はさらに、滑走路のオーバーラン地点から数百メートル以内に硬い物体を設置する空港構造を「犯罪的」とまで批判。航空安全における重大な欠陥を訴えました。
専門家らの見解と韓国当局の説明
米国に拠点を置く非営利団体「航空安全財団」のハッサン・シャヒディ会長も、米ワシントン・ポスト紙の取材に対し、滑走路付近の構造物は衝突時に壊れやすい構造であるべきだと指摘。務安国際空港の構造は、国際的な安全基準に照らし合わせて疑問が残るとの見解を示しました。
韓国国土交通省は、問題のコンクリート壁は高さ約2メートルで、その上に航空機誘導用のローカライザーアンテナが設置されていたと説明。空港南側と北側の土地に高低差があったため、高さを合わせる必要があったとしています。また、構造物は滑走路の安全区域外に設置されており、規定違反ではないとも主張しています。
着陸に失敗し、務安国際空港で炎上する旅客機
しかし、専門家からの批判は収まらず、空港設計の妥当性、安全管理体制の検証を求める声が強まっています。今後の調査によって、事故原因の全容解明とともに、空港の安全基準見直しにつながることが期待されます。
悲劇を繰り返さないために
今回の事故は、航空安全における様々な課題を浮き彫りにしました。バードストライクへの対策はもちろんのこと、空港構造の安全性、緊急時の対応など、多岐にわたる検証が必要不可欠です。二度とこのような悲劇を繰り返さないためにも、徹底的な調査と再発防止策の策定が急務となっています。