務安空港墜落事故:滑走路拡張目前の悲劇、韓国西南部の空の玄関に暗雲

韓国全羅南道・務安国際空港で起きた旅客機墜落事故。181人の搭乗者の安否が気遣われる中、空港関係者、そして地域住民に衝撃が走っています。皮肉にも、この悲劇は空港の悲願であった滑走路拡張工事が完成間近というタイミングで発生しました。

務安国際空港は、開港当時「北東アジアのハブ空港」を目指し、そのビジョンにふさわしい競争力強化のため、2025年中の完工を目標に滑走路延長事業を進めていました。総工費約53億円を投じ、既存の2800メートルから3160メートルへの拡張工事は、すでに70%まで進んでいました。

alt: 務安国際空港の滑走路拡張工事の様子。重機が稼働し、活気あふれる建設現場が広がっている。alt: 務安国際空港の滑走路拡張工事の様子。重機が稼働し、活気あふれる建設現場が広がっている。

しかし、現状の滑走路の長さは、仁川国際空港(3700メートル)、金浦国際空港(3600メートル)と比較すると短く、大型貨物機であるボーイング747の利用に制限がありました。400トンを超える航空機の運航は安全上の理由から制限され、500トン前後の米州路線貨物機の離着陸は事実上不可能でした。

滑走路延長の悲願、そしてF1誘致の失敗

全羅南道は開港以来、国土交通部や企画予算処に滑走路延長の必要性を訴えてきましたが、予算確保の優先順位は低く、実現には至りませんでした。F1開催時には、長距離路線の航空機が「燃料満載での離陸は滑走路が短すぎる」という理由で務安空港への着陸を拒否。F1を通じた空港活性化の試みも失敗に終わっていました。

2022年、ようやく滑走路延長工事が着工。全羅南道は、滑走路延長と、地方空港唯一となる旅客ターミナル直結の湖南高速鉄道第2段階事業の完成により、韓国西南部の玄関口としての飛躍を期待していました。

alt: 事故を起こした済州航空機。胴体着陸の衝撃で機体が損傷している。alt: 事故を起こした済州航空機。胴体着陸の衝撃で機体が損傷している。

事故の背景と今後の課題

今回の事故は、バンコク発務安行きの済州航空機が着陸時に滑走路を逸脱し、南端の壁に衝突、炎上するという痛ましいものでした。搭乗者181人のうち、現時点で80人の死亡が確認され、2人が病院に搬送、残る99人は行方不明となっています。

航空専門家は、「滑走路が長ければ制動距離が長くなるのは当然だが、着陸は風向きや風速など様々な要因が影響する。バードストライクやランディングギアの故障なども指摘されており、詳細な調査が必要だ」と慎重な見方を示しています。

今回の事故は、務安国際空港の将来に大きな影を落としました。「韓国航空大学」のキム・ジフン教授(仮名)は、「今回の事故は、空港の安全管理体制の再点検を迫るものだ。ハード面の整備だけでなく、ソフト面を含めた総合的な安全対策の強化が急務である」と指摘しています。

墜落事故の原因究明、そして行方不明者の捜索は今も続いています。韓国西南部の空の玄関口に再び明るい光が灯ることを願うばかりです。