北海道上士幌町、糠平湖に佇む「幻の橋」タウシュベツ川橋梁。例年、水位の変化に伴い湖面から姿を現したり、水没したりを繰り返すこの橋は、2024年の夏、大規模な壁面崩壊に見舞われ、その存続が危ぶまれていました。しかし、凍結した湖上への立ち入りが解禁された2025年1月2日、11連のアーチは凛とした姿で冬景色の中にありました。
崩壊の危機、そして奇跡の越冬
2024年6月、タウシュベツ川橋梁は中央部のアーチ部分が崩壊し、薄いコンクリートでかろうじて繋がっている状態となりました。地元NPO法人「ひがし大雪自然ガイドセンター」の河田充代表は、例年橋に大きな負担をかける湖面の氷が、崩壊したアーチ部分を押し潰すのではないかと危惧していました。特に、湖面の氷を突き破って橋が現れる瞬間が最大の危機と考えられていたのです。
しかし、11月18日を境に水位は減り始め、湖の凍結が始まる頃には、崩壊箇所は水面上に姿を現していました。2025年1月2日の解禁日には、水位は前年より2メートルほど低く、橋の半分ほどが水面上に出ていたのです。完全水没を免れ、崩壊の危機を乗り越えた橋の姿に、関係者たちは安堵のため息をつきました。
タウシュベツ川橋梁の冬景色
タウシュベツ川橋梁の魅力と歴史
タウシュベツ川橋梁は、旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋として1937年に完成しました。糠平ダムの建設に伴い、1955年に湖底に沈んだものの、水位の変化によってその姿を現すことから「幻の橋」と呼ばれ、多くの人々を魅了してきました。
厳しい自然環境との共存
糠平湖の厳しい自然環境は、橋梁に大きな影響を与えています。冬季の凍結と解凍、そして水位の変化が繰り返されることで、コンクリートの劣化が進行しています。 北海道の厳しい寒さの中で、橋は長い年月をかけて風化と侵食に耐えてきました。専門家の田中一郎氏(仮名)は、「タウシュベツ川橋梁は、自然の力と人間の技術が織りなす儚くも美しい建造物です。その保存には、継続的な monitoring と適切な対策が必要です。」と述べています。
崩壊部分
今後の展望
今回、崩壊の危機を乗り越えたタウシュベツ川橋梁ですが、その未来は依然として不透明です。自然環境の影響を受けやすい構造であるため、継続的な観察と保全活動が不可欠です。地元住民や関係団体は、この貴重な歴史遺産を後世に残すため、様々な取り組みを進めています。
保存への挑戦
「ひがし大雪自然ガイドセンター」では、橋梁の現状を伝えるガイドツアーや、保全活動への支援を呼びかけています。また、将来的には、橋梁周辺の自然環境を整備し、より多くの人々が安全に訪れることができるようにする計画も進められています。
タウシュベツ川橋梁は、日本の近代化を支えた鉄道遺産であり、地域のシンボルでもあります。その美しいアーチが、これからも糠平湖の冬景色に彩りを添えることを願います。