「自民党は分裂すべきだ」──X(旧Twitter)などのSNSでこの声が高まる中、自民党内の緊張が高まっています。7月23日、石破茂首相が麻生太郎氏、岸田文雄氏、菅義偉氏ら歴代首相と会談した際、菅氏から「党の分裂は避けるべきだ」と忠告がありました。本稿では、ネット上に広がる「自民党分裂論」の背景と、石破首相の覚悟について詳述します。
石破茂首相。自民党内の分裂論が高まる中、党首としての強い姿勢と決断が注目される。
ネット上で広がる「自民党分裂論」の二つの側面
現在、X(旧Twitter)などのSNS上では「自民党は分裂すべきだ」という投稿が急増し、様々な意見が交錯しています。しかし、その議論の主流は大きく二つのグループに分けられます。
一つ目のグループは、自民党の現状に深い絶望を抱く層からの声です。彼らは、先般の参院選で国民が厳しい審判を下したにもかかわらず、自民党の国会議員らが「石破おろし」と称される党内抗争にばかり注力し、国民生活の苦境や喫緊の課題解決を軽視していることに、強い憤りや呆れを表明しています。この層の意見は、「党内での権力争いに時間を費やすのであれば、いっそ分裂し、国民にとってより良い選択肢を提供すべきだ」という結論に至っています。
二つ目のグループは、特に保守色の強い有権者、中でも高市早苗氏の支持者が中心です。彼らも第一グループと同様に現行の自民党体制に強い不満を抱きますが、批判の根源は石破政権がリベラル色が強すぎるとの認識にあります。高市氏のような政策通で保守本流を標榜する政治家が、党内力学によって新総裁の座に就きにくい現状を批判。もはや問題が山積する自民党内に留まる必要はなく、高市氏が新党を結成し、真の保守政治を再構築することへの強い期待が込められています。
「保守合同」に起因する自民党の宿痾
自民党内で右派と左派、あるいは保守傍流と保守本流といったイデオロギー対立が先鋭化するのは、党の歴史を紐解けば必然的な側面があります。1955年、戦後の日本において「日本国憲法を尊重し、軽軍備と経済復興を重視する自由党」と、「憲法改正と再軍備を主張する日本民主党」という、思想的に大きく異なる二つの保守政党が“保守合同”により合流し、自由民主党が誕生しました。
これら旧党が抱えていた政策的な相違点は決して小さくなく、この根深い溝は現代の自民党内でも常に「対立の火種」として存在し、時として党全体が機能不全に陥る原因となっています。現在の「自民党分裂論」も、この歴史的な宿痾の表れであると解釈できるでしょう。
しかしながら、そのような内部対立を抱えつつも、自民党が依然として国会で圧倒的な議席数を擁する巨大政党であることは揺るぎない事実です。8月5日現在、自民党公式サイトによると衆議院で196人、参議院で101人の国会議員が所属しています。政治の世界では「数は力」という原則が如実に通用し、仮に自民党が分裂し複数の新党が誕生したとしても、それらは少数政党として出発を強いられることになります。
「党が割れてもいい、徹底的に戦う」石破首相の強い決意
石破首相と親しいとされる自民党の国会議員は、石破首相が最近、首相の座への強い続投意欲を見せていると語ります。この覚悟の背景には、党内を騒がせる「自民党分裂論」が大きく影響しているとのことです。
石破首相は「党の分裂を避けるために首相の座から退くことを求められているが、その必要はない」と断固たる覚悟を決めました。あまりにひどい「石破おろし」の内容に対し、首相としての「意地」を見せたとも解釈できます。実際、石破首相を積極的に応援し、その政治姿勢を支持する国民も少なくありません。
彼は、もし自分が自民党総裁であることに不満を抱く国会議員がいるのであれば、そうした議員は党を離れても構わないという、極めて強い決断を下したのです。親しい自民党国会議員の前では、公然と「党が割れたっていい。徹底的に戦う」と宣言しており、現在の混乱状況の中で揺るぎないリーダーシップを発揮していく姿勢を示しています。
結論:深まる自民党の試練と石破政権の行方
自民党内で表面化した「分裂論」は、単なる派閥間の抗争に留まらず、国民の政治に対する根強い不満と、党の歴史的構造に根差したイデオロギー対立の深化を示しています。このような危機的状況の中、石破首相が示した「分裂も辞さず」という断固たる決意は、党内の混乱に終止符を打ち、自らのリーダーシップを揺るぎないものとしようとする強い意志の表れであると言えます。この政権が、日本政治の安定と発展にどのように貢献していくのか、そして自民党がこの大きな試練を乗り越えて、国民の信頼を回復できるのか、今後の動向が国内外から引き続き注目されます。