12・3戒厳令。この歴史的な出来事から、私たちは軍隊における「命令」と「服従」について深く考えさせられます。当時、一部の軍人はクーデターへの加担を拒否しました。彼らの勇気ある行動は、民主主義を守る上で大きな役割を果たしました。本記事では、12・3戒厳令を踏まえ、軍人における「正当な命令拒否権」の必要性について、法律の観点から解説します。
現行法における「命令」と「服従」の規定
現在の韓国の法律では、軍人の「正当な命令拒否権」は明確に規定されていません。軍刑法第44条は「上官の正当な命令に服従しない者」を処罰対象としていますが、これは「不当な命令を拒否できる」ことを意味するものではありません。
また、軍人服務基本法第25条は「上官の職務上の命令に服従しなければならない」と規定しています。これは私的な命令への服従を拒否できることを意味するものの、違憲・違法な命令への服従を阻止するには不十分です。
韓国軍の兵士
過去の立法の試みと課題
過去にも、軍人の権利に関する立法の動きがありました。2005年の論山訓練所人糞事件や第28師団銃器乱射事件後、盧武鉉政権は軍人服務基本法案に「上官の正当な命令に服従」という条項を盛り込みました。しかし、この法案は成立に至りませんでした。
2014年の「ユン一等兵」「イム兵長」事件後も、市民団体が立法請願を行いましたが、「正当な命令にのみ従う」という内容の法制化は実現しませんでした。
12・3戒厳令:不服従の重要性を示す事例
12・3戒厳令において、一部の軍人がクーデターへの協力を拒否したことは、不服従の重要性を示す象徴的な出来事です。彼らの行動は、軍隊が暴走するのを防ぐ防波堤としての役割を果たしました。法曹界の専門家、例えばキム・ミンチョル弁護士(仮名)は、「12・3戒厳令は、軍人個人が良心に基づき判断し行動することの重要性を示した事例だ」と指摘しています。
12・3戒厳令当時の様子
今こそ必要な「正当な命令拒否権」の法制化
12・3戒厳令の経験を踏まえ、今こそ「正当な命令拒否権」を法制化する必要があります。「処罰されない」のではなく、「拒否する権利がある」ことを明確に規定することで、軍人が違憲・違法な命令に抵抗する法的根拠を与えるべきです。
教育を通じた意識改革
法律の改正と同時に、軍人教育も重要です。「正当な命令拒否権」の意義や適用事例を教育することで、民主主義社会における軍隊の役割を理解させ、良心に基づき判断し行動できる軍人を育成する必要があります。
結論:真の安全保障のために
憲法は、軍隊に「国家の安全保障と国土防衛の神聖な義務」を課しています。この義務を真に果たすためには、「盲目的に服従する軍人」ではなく、「悩み、判断する軍人」を育成することが不可欠です。「正当な命令拒否権」の法制化と教育を通じ、真の安全保障を実現していく必要があると言えるでしょう。