LCC墜落事故で揺らぐ韓国航空業界の未来:安全と成長の両立は可能か?

韓国の格安航空会社(LCC)業界は、2005年の済州航空設立から20年を経て、大きな岐路に立たされています。2024年12月29日に発生した済州航空7C2216便の事故は、LCC業界の成長神話を揺るがし、安全対策の強化と信頼回復が喫緊の課題となっています。

低価格戦略で急成長を遂げたLCC業界、しかし…

務安国際空港で発生した済州航空7C2216便の事故現場(c)news1務安国際空港で発生した済州航空7C2216便の事故現場(c)news1

韓国のLCCは、低価格戦略を武器に、国内線・国際線ともに大きなシェアを獲得してきました。国土の広さが韓国の約98倍もある米国とほぼ同数の9社がひしめく競争市場において、2023年1-11月の国内線利用者の65%、国際線利用者の35.3%がLCCを利用。済州航空、ティーウェイ航空、ジンエアーの3社は年間売上高1兆ウォンを突破するなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。2024年以降も更なる成長が期待されていましたが、今回の事故により、その展望は大きく変わってしまったのです。

事故で露呈した安全への不安、業界再編にも影

今回の事故は、LCCの安全性に対する懸念を改めて浮き彫りにしました。事故原因の究明はまだ途上ですが、大手航空会社(FSC)に比べて低い整備費用や、過密な運航スケジュールに対する不安の声が高まっています。事故後、済州航空の予約キャンセルは6万件を超え、運航量を10-15%削減せざるを得ない状況に追い込まれています。航空評論家の金成宇(キム・ソンウ/仮名)氏は、「今回の事故は、LCC業界全体の信頼を損なう可能性がある。安全対策への投資を怠ってきたツケが回ってきたと言えるだろう」と厳しい見方を示しています。

統合・再編の行方は?

LCC業界では、大韓航空とアシアナ航空の合併に伴うLCC子会社(ジンエアー、エアソウル、エアプサン)の統合、済州航空によるイースター航空買収、ティーウェイ航空の事業拡大など、再編の動きが活発化していました。しかし、今回の事故は、これらの計画にも影響を与える可能性があります。安全対策への投資が最優先事項となり、再編の動きが鈍化する可能性も指摘されています。

信頼回復へ、安全への投資と意識改革が不可欠

LCC業界が20年間で築き上げてきた成長は、消費者の信頼があってこそ。今回の事故を教訓に、業界全体で安全基準を強化し、信頼を取り戻すことが不可欠です。航空安全コンサルタントの朴美淑(パク・ミスク/仮名)氏は、「LCC各社は、設備や人材への投資を拡大し、安全管理体制を徹底的に見直す必要がある。価格競争だけでなく、安全性を重視した経営への転換が求められている」と強調しています。 LCCは、低価格を実現しながらも、安全性を確保するという難しい課題に直面しています。この危機を乗り越え、持続可能な成長を実現できるのか、今後の動向が注目されます。