大統領への逮捕状執行という異例の事態に、警護のために動員された兵士たち。その親たちの胸中には、国を守る息子への誇りと、危険な任務への不安が入り混じっている。大統領警護と兵士動員の是非をめぐり、韓国社会の緊張が高まっている。
大統領官邸警護に動員された兵士たち:親たちの不安の声
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する逮捕状執行の際、大統領警護処が陸軍首都防衛司令部所属の兵士を動員したことが波紋を広げている。兵士を持つ親たちは、息子たちが「内乱犯の警護に利用されている」と強い憤りを表明し、不安の声を上げている。
現役将兵の親であるソさんは、「戒厳令発令時や前回の逮捕状執行時にも兵士は動員されなかったと聞きましたが、結局は嘘だった。戦争に投入される方がまだましだ。官邸で弾除けにされるのは耐えられない。息子を軍隊に送った目的はこんなことではない」と語気を強めた。
また、兵役中の息子を持つイさんは、「捜査中の事件に韓国の若者が動員されるのは嘆かわしい。閉鎖的な組織の中で、末端の兵士が声を上げるのは難しいだろう。この不名誉の責任は誰が取るのか」と疑問を呈した。
オンラインコミュニティ上でも、多くの親たちが「息子と数日間連絡が取れない」「2回目の令状執行時にも動員されるのではないかと不安だ」といった声を上げている。中には、国防部に抗議の電話や嘆願書を送る親もいるという。
ソウルの大統領官邸周辺に設置された車の壁
警護処の動員と国防部の反発:高まる緊張
韓国警察庁国家捜査本部非常戒厳特別捜査団は、「証拠に基づき、警護処が逮捕状執行を阻止する際に兵士が動員されたことを確認した」と発表。警護処は、高位公職者犯罪捜査処の検事と捜査官の官邸への進入を阻止するため、首都防衛司令部所属の部隊から数十人を動員したとされている。
これらの部隊は大統領警護法に基づき警護処の指揮下にあるものの、国防部は「高位公職者犯罪捜査処の逮捕状執行を阻止するために兵力を投入するのは適切ではない」との立場を警護処に伝えた。さらに、部隊の指揮官には「警察との物理的衝突を避けるように」との指示を出したという。
現役将兵の親たちが結成した団体は、「軍人の息子の士気と名誉を踏みにじる警護処の違法行為と傲慢さにこれ以上耐えられない。息子たちに『内乱犯の護衛兵』という汚名を着せようとする警護処の行為を直ちに中止するよう求める」との声明を発表した。
軍事専門家の見解:大統領警護のあり方が問われる
軍事専門家のパク・ミンチョル氏(仮名)は、「大統領警護は重要だが、兵士を政治的な対立に巻き込むべきではない。警護処の行動は軍の政治的中立性を損なう恐れがあり、再考が必要だ」と指摘する。今回の事態は、大統領警護のあり方そのものを問うものとなっている。
兵士動員の是非:国民の関心集まる
大統領への逮捕状執行という前例のない事態に、兵士動員の是非をめぐる議論が白熱している。国民の関心は、今後の展開と政府の対応に注がれている。