2024年1月2日、新年の幕開けに衝撃が走った。海上保安庁の航空機と日本航空機の衝突炎上事故。5名の尊い命が奪われ、機長が重傷を負ったこの事故から1年が経とうとする中、昨年12月25日に運輸安全委員会が調査経過報告書を公表。その内容が様々な憶測を呼んでいる。今回は、この報告書の内容と今後の展望について詳しく解説する。
事故概要と報告書のポイント
379名を乗せた旅客機が炎上するという未曾有の事故。その原因究明と再発防止こそが、この報告書の最大の焦点だ。報告書では、日本航空機、海上保安庁機、そして両機に指示を出す管制、この三者の視点から事故に至るまでの経緯を詳細に分析している。
衝突事故現場
事故当時、管制は滑走路手前で停止するよう指示していたにも関わらず、海上保安庁機が滑走路に進入し、日本航空機と衝突したことは既に報道されていた。今回の報告書では、前日に発生した能登半島地震の支援活動中だった海上保安庁機の機長が「震災支援のため優先離陸が許可されたと認識していた」こと、本来確認すべき管制が誤進入に気付かなかったこと、そして日本航空機も海上保安庁機を見落としていたことなどが新たに指摘されている。
国交省管轄下における三者の関係性
航空評論家の山田一郎氏(仮名)は、「今回の事故は単独の航空機事故ではなく、民間機、海上保安庁機、そして管制、この三者の行動が複雑に絡み合って発生した極めて特殊なケースと言えるでしょう」と語る。 これら三者は全て国交省の管轄下にあり、報告書を作成するにあたっては関係各所とのバランスに細心の注意が払われたと推測される。
海上保安庁機の“聞き間違い”:重大な過失か?
国交省関係者によると、今回初めて公開された海上保安庁機の音声記録から、機長と副機長が管制の指示を誤解したまま交信していたことが明らかになったという。 日本航空機と管制の“見落とし”とは異なり、海上保安庁機の“聞き間違い”はより重大な過失と捉えることもできる。
刑事責任追及の行方:警視庁の捜査に影響は?
業務上過失致死傷容疑で捜査を進める警視庁にとっても、この報告書の内容は見過ごすことはできないだろう。捜査関係者によると、「運輸安全委員会の調査は再発防止を目的としているのに対し、警察の捜査は刑事責任の追及を目的としており、両者は全く別のものです。しかし、安全委員会の報告書は刑事事件における重要な証拠となるため、警察の捜査も報告書の内容を無視することはできません」とのこと。
航空機衝突事故
業務上過失致死傷事件においては、事故の予見可能性、回避可能性、そして過失の有無が立件の鍵となる。今回の事故では、別の航空機が着陸予定の滑走路に進入すれば事故が発生することは容易に想像できるため、焦点となるのは日本航空機、海上保安庁機、そして管制、それぞれの過失の程度となるだろう。
海上保安庁機の聞き間違いを指摘した今回の報告書は、海上保安庁機の機長に責任を帰する方向へ捜査を進めるものと解釈できる可能性もある。最終報告書が提出されるまでには1年以上、そして立件までにはさらに時間を要すると見込まれる。今後の展開に注目が集まる。