韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が「12・3非常戒厳事態」から45日目、拘束の岐路に立った。高位公職者犯罪捜査処(公捜処)は17日午後5時40分ごろ、ソウル西部地裁に内乱首謀、職権乱用など容疑で尹大統領に対する拘束令状を請求した。現職大統領に拘束令状が請求されたのは憲政史上初めて。
尹大統領に対する拘束前被疑者尋問(令状実質審査)は18日午後2時、チャ・ウンギョン西部地裁第1民事部部長判事(司法研修院第30期)の審理で行われる予定だ。チャ部長判事が週末の18日の当直であり、尹大統領の1・2次逮捕状をそれぞれ発付したイ・スンヒョン、シンハンミ令状担当部長判事の代わりに審査を引き受けることになった。尹大統領は前日にソウル中央地裁で開かれた逮捕適否審査に欠席したのに続き、18日に開かれる令状実質審査にも出席しないとみられる。尹大統領は令状請求の直後、「拘束状況を認めることはできないが、水が流れるように行くしかない」と弁護団に欠席の意思を明らかにした。しかし夜には尹甲根(ユン・ガプクン)弁護士が「検討の余地はあるのか」という質問に「はい、朝に総合して発表する」と答えた。
公捜処からは主任検事のチャ・ジョンヒョン部長検事を含む検事6、7人が令状実質審査に出る予定だ。拘束されるかどうかの結論は通常、審査当日の午後遅くから翌日早朝の間に出る。拘束令状が発付されれば尹大統領は逮捕日(15日)から最大20日間拘束されながら捜査を受ける。公捜処によると、尹大統領に対する拘束令状請求書は約150ページ分量という。公捜処の関係者は「(請求書には)基本的に罪を犯したと疑われる相当な理由と犯罪の重大さ、再犯の危険性など拘束を必要とする事由が入ると理解してほしい」とし「警察国家捜査本部と検察が核心被疑者尋問調書を提供し、これを総合して令状に反映したと聞いている」と説明した。
公捜処は前日、検察から朴安洙(パク・アンス)戒厳司令官(陸軍参謀総長)、呂寅兄(ヨ・インヒョン)国軍防諜司令官、郭種根(クァク・ジョングン)陸軍特殊戦司令官、李鎮遇(イ・ジンウ)首都防衛司令官、ムン・サンホ情報司令官の5人の被疑者尋問調書が伝達された。これに先立ち金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防部長官の起訴状と被疑者尋問調書など検察の捜査記録が伝えられた。
公捜処側は拘束令状を西部地裁に請求したことに関し「通常、逮捕状発付裁判所に請求してきたうえ、西部地裁の異議申請と中央地裁逮捕適否審棄却などを通して管轄裁判所の問題は裁判所の判断である程度希釈されたとみる」と明らかにした。これに対し尹大統領側の石東炫(ソク・ドンヒョン)弁護士は「令状実質審査で内乱容疑の正当性と拘束の相当性について争う」とし「起訴もできない西部地裁に裁判所ショッピングをするように令状を請求するのは座視しがたい」と述べた。尹大統領側は審査で「現職大統領の身分で拘束の必要性と相当性はない」という立場も明らかにする予定だ。
尹大統領は前日午後2時の調査に続き、この日午前10時の公捜処の追加調査のための出席要求も拒否した。「初日の調査で十分に立場を明らかにし、一問一答式の尋問に答える理由、必要性がない」という理由でだ。その代わり尹大統領はこの日午後、尹甲根弁護士を通じて「国民に伝える手紙」を公開した。尹大統領は手紙で「少し不便はあるが、拘置所で元気だ」とし「多くの国民が寒い路上に出て国のために力を合わせると聞いた。国民の皆さんの熱い愛国心に感謝する」と明らかにした。
◆公捜処、拘束なら10日以内に捜査結論…24日ごろ検察へ
尹大統領は金竜顕前国防部長官と共謀して先月3日、違憲・違法な非常戒厳を宣言するなど、国憲紊乱を目的に暴動を起こした容疑を受ける。また国会の政治活動まで禁止する不法な戒厳布告令を発令した後、戒厳軍と警察を動員して国会を封鎖し、非常戒厳解除議決を妨害した容疑もある。
西部地裁が尹大統領に対して2回の逮捕状に続いて拘束令状を発付する場合、公捜処の捜査は新たな局面を迎えることになる。公捜処としては2021年1月の設立以降、先月20日に拘束したムン・サンホ国軍情報司令官に続いて2人目の被疑者拘束事例となる。
特に拘束令状が発付される場合、尹大統領の内乱首魁容疑捜査に弾みがつく見込みだ。尹大統領が拘束されれば、ソウル拘置所内の拘引被疑者控室から一般収容室に移動することになり、収容番号が付く。囚衣着用とマグショット撮影、精密身体検査なども行われる。
公捜処が尹大統領を拘束する場合、逮捕期間を含む10日以内に捜査の結論を出さなければいけない。大統領起訴権がないため検察に起訴を要求することになるからだ。両機関は被疑者拘束期間(最大20日)を半分ずつ分けて使うことに暫定合意した状態だ。尹大統領が拘束されて合意に変動がなければ、公捜処は24日ごろ検察に尹大統領の事件を移すとみられる。
ただ、拘束以降の調査の実効性は課題だ。捜査機関にとって逮捕・拘束は被疑者圧迫を通して陳述と自白を引き出す手段の性格が強いが、尹大統領側の出席および陳述拒否意志が強い。公捜処の関係者は「拘置所出張調査、調査室強制拘引などは、令状発付の有無が決定した後に調査に応じるかどうかを見て決める問題」と言葉を控えた。
尹大統領が当初の立場を変えて18日に西部地裁で開かれる令状実質審査に出席する場合には、15日の公捜処とソウル拘置所への移動時とは違い、警護処の車両でなくソウル拘置所の護送用車両で移動することになる。法務部は「拘禁被疑者の身柄に対する責任は拘置所にあるため、拘置所主導の下で移動する」とし「ただ、現職大統領である点を考慮し、護送過程で警護処の警護も受けることになる」と説明した。
護送車にはソウル拘置所の刑務官が同乗し、警護官は乗ることができない。その代わり警護処との協議に基づき、護送車の周辺を警護車両4-6台が同行するとみられる。関係者は「尹大統領は現在、収容者の身分であるため戒護権(服役者を管理・監督する権利)が警護権より優先される」と説明した。刑務官の密着監視を受けるだけに護送の過程で手錠や捕縄は使用されない可能性が高いという。