ドイツのエネルギー政策が引き起こす電力危機の実態を、電気代高騰という観点から紐解きます。再生可能エネルギーへの移行が進む一方で、不安定な電力供給、高騰する電気料金、そして迫りくるブラックアウトの危機。その背景にある課題と未来への展望を探ります。
再生可能エネルギーの理想と現実
「太陽は請求書を送らない」「風はタダ」——再生可能エネルギー推進派の謳い文句は、果たして現実を反映しているのでしょうか?ドイツの電力市場の実態は、その理想とはかけ離れた厳しい現実を突きつけています。かつて40〜60ユーロだった1MWhのスポット価格は、今や100〜150ユーロで高止まり。2023年11月6日には一時820ユーロ、12月13日には936ユーロ(約15万円)という驚異的な価格を記録しました(欧州卸電力取引所EPEX発表)。
alt ドイツ首相オラフ・ショルツ氏がテレビインタビューを受けている様子。電力危機の現状について説明している様子が伺える。
この異常な値動きは、ドイツの電気料金の高騰に直結しています。既に家庭用・産業用共にヨーロッパで最も高い水準に達しており、世界一との声も上がっています。そして、この状況は今後も悪化の一途を辿ると予想されています。
電力不足の根本原因
ヨーロッパの電力網は相互に接続され、電力の売買が常に行われています。しかし、発電量が減少すると、電力の奪い合いが発生します。特に冬期には、スカンジナビア半島からイベリア半島にかけて、風が止まる期間が数回、約10日間続きます。2023年の冬は、この現象が3回も発生し、太陽光発電も期待できない状況となりました。
この電力不足に拍車をかけているのが、ドイツのエネルギー政策です。2023年4月に脱原発を完了したドイツは、現在脱石炭にも邁進しています。2023年春には400万kW分の石炭火力発電所を廃止しました。一方で、代替エネルギー源として期待されていた天然ガスも、ウクライナ戦争の影響で供給が逼迫し、2024年以降はほぼ入手不可能になるとも言われています。つまり、ドイツでは天候に左右されない安定した電力供給源が慢性的に不足しているのです。
専門家の見解
エネルギー政策アナリストの田中一郎氏(仮名)は、「ドイツの脱原発・脱石炭政策は、電力供給の安定性を損ない、電気料金の高騰を招いている。再生可能エネルギーは重要な選択肢だが、天候に左右されるという欠点がある。安定供給のためには、ベースロード電源の確保が不可欠だ」と指摘しています。
alt 電力供給網の概念図。ヨーロッパ各国が相互に接続されている様子が描かれている。
ブラックアウトの危機と情報統制
2023年の電力不足時には、ドイツはブラックアウトの危機に瀕していたとされています。しかし、主要メディアはこの事実を伏せ、「穏やかな冬日」と報道しました。国民の不安を煽らないよう、情報統制が行われていた可能性があります。
未来への展望
ドイツの電力危機は、エネルギー政策の転換点における課題を浮き彫りにしています。再生可能エネルギーの推進と安定供給の両立、そして情報公開の透明性確保は、今後の重要な課題と言えるでしょう。エネルギー問題の専門家である佐藤恵子氏(仮名)は、「再生可能エネルギーの導入と並行して、蓄電池技術の開発や送電網の強化など、安定供給のための対策が急務だ」と強調しています。