税務調査がやってきた
「亡くなったAさんの通帳を見ると、◯年△月×日に100万円がBさん(Aさんの孫)の口座に移っていますが、当事者間ではどのようなやり取りがあったのですか?」
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3年前に父親が急逝し、相続を済ませていた角田雄一郎さん(仮名・65歳)の自宅を税務署の職員が訪ねてきたのは昨年夏のことだった。
角田さんの父親が残した遺産は評価額4000万円の土地と現預金が3000万円ほど。すでに母親は亡くなっており、角田さんがすべて相続して相続税を約480万円納付した。以来、相続のことは忘れていた。
そこに国税の税務調査がやってきた。角田さんはヒヤッとした。10年ほど前から、自分の息子(B)名義の口座に折を見て100万円ずつ振り込むよう、父親に依頼していたからだ。
ただし、息子にただカネを与えて、父親の築いた資産を無駄遣いされるのも癪に障る。そこで角田さんは、息子が子供の頃に作り、今は本人が使っていない息子名義の口座にカネを振り込んでもらっていた。
その額、しめて500万円。さしたる金額ではないが、マイホームの購入など、息子にまとまったカネが必要なときにそっと渡そうと思っていた。
贈与契約書はあるのだけれど
税務署の職員が、このカネのことを聞いてきているのは明らかだ。だが、角田さんだってバカではない。こういうこともあろうかと、手は打ってある。
ネットで調べると、当事者間で贈与契約書を作っておけば、暦年贈与であることの証明になるという。そこで、角田さんは契約書を作成し、父親にサインと捺印をしてもらった。息子の分は角田さんが代わって署名をした。同じ名字だからバレないだろうと、自分のハンコをついた。その契約書を手にして、税務署の職員に、こう言った。
「暦年贈与の範囲内ですよね。こうして、契約書もあります」
職員は口元にうっすらと笑みを浮かべたように見えた。
「どういういきさつで作ったのですか?」
「孫もなにかと入り用だろうということで……」
「お孫さんはどんな反応でしたか?」
「喜んでいました」
「でも、契約書のハンコは角田さんのハンコと同一では?相続税納付時の書類のものと一緒ですよ。署名も筆跡が角田さんと似ているように見えます」
「…………」