パワハラで2000万円の賠償金! 証拠がなくても勝訴できるケースとは?

パワハラで苦しみ、休職に追い込まれたとしても、決定的な証拠がないと泣き寝入りしてしまうケースが多いのではないでしょうか。しかし、長崎地裁で驚くべき判決が出ました。録音データなどの明確な証拠がないにもかかわらず、会社から2000万円もの賠償金を勝ち取った男性の事例をご紹介します。一見パワハラとは無関係に見える資料からも、記憶を丁寧に復元することで、裁判で勝訴を勝ち取れる可能性があるのです。今回は、この事例を通して、パワハラ被害から身を守る方法を探っていきましょう。

証拠がなくても勝訴できた理由とは?

2013年3月、デザイナーのAさんは新しい上司S氏から人格を否定するような暴言を浴びせられるようになりました。「嘘つき」「卑怯者」「犯罪者」…想像を絶するパワハラの日々が続き、Aさんは適応障害を発症し、2014年7月に休職、1年後には解雇されてしまいました。

Aさんは弁護士に相談し、2015年12月に長崎地裁へ提訴。そして3年後、会社に約2000万円の支払いを命じる判決が下されました。 この判決のポイントは、録音データなどの直接的な証拠がなくても、Aさんの記憶を丁寧に復元し、状況証拠を積み重ねることで、裁判所がパワハラの事実を認定した点にあります。

alt パワハラで苦しむ男性のイメージalt パワハラで苦しむ男性のイメージ

裁判所が認定したパワハラの内容

裁判所は、S氏のパワハラを「叱責のための叱責と化し、業務上の指導を逸脱した執拗ないじめ行為」と断じました。S氏はAさんの業務負担が増加しているにもかかわらず、さらに困難な目標を課し、達成できないと厳しく叱責。しまいには、Aさんの目つきや態度が気に食わないといった理由で叱責するなど、常軌を逸した行為が続いていたと認定されました。

2000万円の内訳

2000万円という高額な賠償金は、一体どのような内訳になっているのでしょうか?大きく分けて以下の3つの項目から構成されています。

パワハラの慰謝料と弁護士費用:275万円

約1年間にも及ぶパワハラに対して、慰謝料250万円、弁護士費用25万円が認められました。 労働問題に詳しい弁護士の田中一郎氏(仮名)は、「近年のパワハラ裁判では、被害者が生存している場合でも500万円以上の慰謝料が認められるケースが増えています。今回の250万円という金額は、必ずしも高額とは言えないでしょう。」と指摘しています。

未払い給与など:約1725万円

2000万円の大部分を占めるのが、休職期間中の未払い給与や解雇予告手当などです。Aさんのケースでは、休職期間満了を理由に解雇されたことが違法と判断され、これらの支払いが命じられました。

alt 裁判のイメージalt 裁判のイメージ

記憶の復元が勝訴の鍵

Aさんのケースで注目すべきは、明確な録音データなどの証拠がなくても、詳細な記憶の復元によってパワハラの事実が認められた点です。業務日報やメール、同僚の証言など、一見パワハラとは関係ないと思われる資料からも、丁寧に事実関係を積み重ねていくことで、裁判所を動かすことができるのです。

パワハラ被害に遭わないために

パワハラは、誰にでも起こりうる問題です。被害に遭わないためには、日頃から職場環境の改善に努め、パワハラに該当する言動があった場合は記録を残しておくことが重要です。また、信頼できる相談相手を見つけておくことも大切です。

今回の判決は、パワハラ被害に苦しむ多くの人にとって希望の光となるでしょう。一人で抱え込まず、専門家や関係機関に相談することで、解決の糸口が見つかるかもしれません。 jp24h.comでは、今後も労働問題に関する最新情報をお届けしていきます。