札幌ススキノ事件:田村修被告第5回公判、母・浩子被告が証言台に、娘・瑠奈被告の精神状態と家族の対応が明らかに

2023年7月に札幌市ススキノのホテルで発生した凄惨な殺人事件。被害者Aさん(当時62歳)の命を奪ったとされる田村瑠奈被告(30歳)とその両親の裁判が続いています。今回は、殺人ほう助などの罪に問われている父・田村修被告(61歳)の第5回公判の様子、そして証人として出廷した母・浩子被告(62歳)の証言内容を中心に、事件の背景に迫ります。

母親の証言:謝罪と娘の異変

法廷に姿を現した浩子被告は、被害者Aさんとご遺族に対し、深く謝罪の言葉を述べました。その沈痛な表情からは、事件の重大さと向き合う苦悩が伺えました。

札幌地裁で開かれた田村修被告の第5回公判の様子札幌地裁で開かれた田村修被告の第5回公判の様子

浩子被告の証言によると、瑠奈被告は中学時代から不登校となり、18歳頃から自宅に引きこもるようになったとのこと。さらに、「複数の人格が入り込んでいる」という“ゾンビ妄想”を抱えるようになり、周囲を不安にさせる言動が増加していったといいます。

家族の対応と医療へのアクセス

弁護側は、瑠奈被告の異変に対する家族の対応について尋ねました。浩子被告は、瑠奈被告が小学生の頃に不登校になった際、本人の希望で病院を受診したものの、改善が見られず通院を中断したと説明。その後、20歳頃に再び病院を受診し、しばらく通院を続けたものの、「信頼していた医師」が倒れたことをきっかけに、再び通院をやめてしまったと証言しました。

精神科医である夫への依存

浩子被告は、夫である修被告が精神科医であることから、「よほどのことなら病院に連れて行ってくれるだろう」と考えていたと述べました。瑠奈被告の“ゾンビ妄想”については認識していたものの、日常生活に支障がないように見えたため、積極的に対応しなかったといいます。

就労支援への思いと娘の将来

浩子被告は、瑠奈被告の将来を案じ、就労継続支援施設のパンフレットを用意していたことも明かしました。「こういう選択肢もある」と伝えたいと考えていたものの、実際に瑠奈被告に渡すことはなかったとのことです。

事件現場となったススキノのホテル事件現場となったススキノのホテル

今回の公判では、浩子被告の証言を通して、瑠奈被告の精神状態や家族の対応、そして事件に至るまでの背景が少しずつ明らかになってきました。今後の公判で、事件の真相がさらに解明されることが期待されます。