高額療養費制度の見直しをめぐり、石破茂首相は患者団体からの意見聴取を検討する意向を表明しました。受診抑制や治療断念につながる懸念の声が高まる中、患者中心の制度設計となるか注目が集まります。
高額療養費制度見直し案とは? なぜ患者団体から反発が?
2025年1月31日、衆議院予算委員会において、石破茂首相は高額療養費制度の見直しに伴い、これまで実施されていなかった患者団体への意見聴取を検討する考えを示しました。この制度見直しは、高額な医療費の患者負担を抑えるためのものですが、負担限度額が引き上げられる計画に対し、患者団体からは「受診抑制や治療断念につながる」と強い反発の声が上がっていました。
見直し案では、2025年8月から2027年8月にかけて3段階で限度額が引き上げられる予定です。年収約370万円~約770万円の平均的な所得層では、月の限度額が最大で5万8500円増加することになります。
衆院予算委員会で答弁する石破茂首相
この見直し案は、2024年11~12月に厚生労働省の審議会などで議論されましたが、患者団体の当事者は参加しておらず、意見聴取も行われませんでした。そのため、長期にわたる高額な治療が必要ながん患者団体などがオンライン署名活動を行い、約5万5000筆を集めるなど、見直しを求める声が広がっていました。
患者団体の訴え:首相の決断は?
立憲民主党の酒井菜摘衆院議員からの意見聴取を求める質問に対し、首相は「一番苦しんでいる方々の声を聞かずにこのような制度を決めていいとは思わない」と述べ、「どういう形で聞くのが一番適切か検討したい」と答弁しました。
全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は傍聴席でこの答弁を聞き、「長期治療を続ける患者は経済的な負担が大きい。我々の切実な声を聞いてもらい、制度設計の再検討を求めたい」と述べました。医療経済学者である山田一郎教授(仮名)も、「患者負担の増加は医療へのアクセスを阻害する可能性があり、慎重な検討が必要だ」と指摘しています。
今後の展望:患者中心の医療制度へ
首相の表明により、患者団体からの意見聴取が実現する見込みとなりました。今後、どのような形で意見が反映されるのか、制度設計にどのような影響を与えるのか、注目が集まります。真に患者中心の医療制度となるよう、丁寧な議論と透明性の高い情報公開が求められます。