ケニアでは、女性に対する暴力事件が深刻な問題となっています。警察の統計によると、わずか3ヶ月間で97人もの女性が殺害されるという痛ましい現実があります。このような状況の中、高齢女性たちが自らの身を守るため、護身術を学ぶ動きが広がっています。彼女たちは「クク・ジュキンゲ」、スワヒリ語で「おばあちゃん、身を守って」という意味のグループを作り、力強く立ち上がっています。
クク・ジュキンゲ誕生の背景
ナイロビ近郊の貧困地域、コロゴチョでは、レイプや殺害事件が後を絶ちません。高齢女性も例外ではなく、標的にされるケースが増加しています。81歳のベアトリス・ムンガイさんは、かつてこの地域で高齢女性が襲われ、殺害された後、川に遺棄されるという悲惨な事件を目の当たりにしました。
そんな中、希望の光となったのが、約25年前にアメリカ人夫婦が始めた護身術クラスです。このクラスは、コロゴチョで相次ぐレイプ事件を受け、地域住民と協力して立ち上げられました。ムンガイさんをはじめとする高齢女性たちは、このクラスで「クク・ジュキンゲ」を結成し、自分たちの身は自分で守ることを決意しました。
護身術を学ぶ高齢女性たち
アメリカ人夫婦の献身的な指導
ムンガイさんは、アメリカ人夫婦のジェイクさんとその妻が、彼女たちの窮状を知り、護身術を指導してくれることになった経緯を語っています。ジェイクさんは村長の事務所で6ヶ月間、女性たちに護身術を教え、彼女たちの勇気を後押ししました。
女性を狙った暴力の増加
活動家によると、ケニアの貧困地域では女性を狙った殺人が増加傾向にあるといいます。社会経済的な不平等や女性に対する法的な保護の不足が、この問題の根底にあると専門家は指摘しています。さらに、ケニアでは配偶者間のレイプが犯罪として認められていないなど、法整備の遅れも深刻です。
教会でパンチの練習をする女性
襲撃犯を撃退した女性の勇気
数年前、男に襲われたメアリー・ワイナイナさんは、護身術を使って犯人を撃退することに成功しました。ワイナイナさんは、教会で他の女性たちと共にパンチの練習をしながら、当時の状況を語っています。冷静に状況を判断し、学んだ護身術を駆使して危機を脱した彼女の勇気は、他の女性たちの希望となっています。
警察の対応の遅れ
活動家たちは、ケニア警察が被害者からの相談に適切に対応しないことが常態化していると指摘しています。このような状況下で、女性たちは自らの安全を守るために、護身術を学ぶ必要性を強く感じています。
護身術クラスの様子
自分の身は自分で守る
クク・ジュキンゲのメンバーたちは、自分たちの身は自分で守るしかないと話しています。彼女たちの勇気と行動力は、ケニア社会における女性に対する暴力の問題を改めて浮き彫りにし、変化への力強い一歩となるでしょう。困難な状況の中でも、希望を捨てずに立ち上がる彼女たちの姿は、多くの人々に勇気を与えています。