韓国中小企業の苦境:廃業増加の背景と対策

韓国では、小規模事業者の廃業が深刻な社会問題となっています。本記事では、その背景にある経済状況や人件費高騰の影響、そして今後の対策について詳しく解説します。

廃業増加の現状と経済への影響

2024年には、韓国で廃業した小規模事業者が約100万人に達し、過去最大を記録しました。これは、約8兆円もの経済損失に相当し、韓国経済全体への影響も懸念されています。2025年もこの傾向は続き、さらに深刻化すると予想されています。景気低迷や内需不振に加え、人件費の高騰が廃業の大きな要因となっています。

韓国の飲食店韓国の飲食店

廃業に至った事業者の平均負債額は約250万円にものぼり、従業員の大量離職にもつながっています。これは、個人の経済的困難だけでなく、韓国産業全体の競争力低下にも繋がる深刻な問題です。

人件費高騰の深刻な影響

最低賃金の上昇も、小規模事業者の経営を圧迫する大きな要因となっています。2025年の韓国の最低賃金は時給1003円を超え、多くの小規模店舗にとって大きな負担となっています。中小企業中央会の調査によると、廃業した小規模事業者の約半数が人件費の上昇を主因として挙げています。

週20時間勤務の従業員を1人雇用する場合、2年間で月1万5000円の追加支出が必要となるなど、人件費の負担は年々増加しています。2017年と比較すると、最低賃金は約356円(55%)も上昇しており、小規模事業者にとっては大きな痛手となっています。

生き残り戦略:超短時間アルバイトと一人経営

こうした状況下で、生き残りをかけて「超短時間アルバイト」の導入や「一人経営」への移行を図る小規模事業者も増えています。2024年には、週15時間未満の超短時間労働者が174万人を超え、過去最多を記録しました。また、従業員を持たない一人自営業者も422万人に達しています。

しかし、これらの対策も一時的なものであり、根本的な解決には至っていません。67歳で衣料店を経営する女性は、「コロナのときも何とか乗り越えたが、人件費にはもう耐えられない。助けてくれる家族がいなければ、廃業するしかない」と深刻な状況を訴えています。

専門家や業界団体からの提言

小規模事業者団体は、「最低賃金を上げるなという話ではなく、実情を考慮してほしい」と訴えています。小商工人連合会のソン・チヨン会長は、「現在の最低賃金は、小規模店舗の実態を反映していない」と指摘し、業種別での最低賃金適用を求めています。

中央大学のイ・ジョンヒ教授も、「5人未満の事業所が多い小売業や飲食業では、現在の最低賃金は過剰だ」と指摘し、業種別の平均賃金などの実態調査に基づいた客観的なデータ収集の必要性を訴えています。

今後の展望と課題

韓国政府は、小規模事業者の支援策を強化する必要があります。最低賃金の引き上げだけでなく、人件費補助金の拡充や経営コンサルティングの提供など、多角的な支援策が求められています。また、中小企業の生産性向上や新技術導入への支援も重要です。

韓国経済の活性化のためには、小規模事業者の持続的な発展が不可欠です。関係者全体の協力と努力が求められています。