ウクライナ紛争の終結は、トランプ大統領が掲げる「ノーベル平和賞プロジェクト」の中核を成す。果たして、公言通り6ヶ月以内に和平実現は可能なのだろうか? 本稿では、複雑に絡み合う国際情勢、各国の思惑、そして鍵を握る原油価格動向を分析し、停戦の可能性を探る。
トランプ氏の戦略と和平交渉の行方
トランプ大統領はプーチン大統領との電話会談を示唆し、「重要なこと」が行われると発言した。実現すれば就任後初の直接対話となる。しかし、国際政治専門家の多くは、交渉開始の段階に過ぎないと見ている。ゼレンスキー大統領も従来の議論は「一般的なレベル」にとどまり、具体的な合意には更なる協議が必要との認識を示した。
ウクライナとロシアの国旗
トランプ大統領自身は具体的な和平条件を明言していない。しかし、昨年12月のパリでの米ウクライナ首脳会談以降、報道や関係国の動向から、停戦案の骨子が浮かび上がってきた。戦線凍結、ロシア占領地域の認定(ウクライナ占領下のクルスク州との交換を含む)、ウクライナのNATO加盟猶予、平和維持軍の駐留と米国の軍事支援などが想定されている。しかし、これらの実現には多くの困難が伴う。ロシアとウクライナが、ブダペスト覚書やミンスク合意の失敗を乗り越え、合意点を見出せるかは不透明だ。
ロシア優勢の戦況とプーチンの思惑
和平交渉の停滞要因の一つは、ロシアに有利な戦況だ。プーチン大統領にとって、交渉を急ぐ必要性は低い。パク・ノビョク元ロシア大使は、「交渉成功には両国の立場が対等である必要があるが、米国はウクライナへの支援を縮小している」と指摘する。トランプ大統領自身も、欧州連合(EU)の負担増を要求し、米国への影響は限定的との見解を示している。
戦車
プーチン大統領は、時間稼ぎによって占領地拡大、NATO加盟阻止、制裁解除などの目標達成を目指しているとみられる。西側の疲弊と分裂も計算に入れているようだ。
原油価格と和平への影響
トランプ大統領は、原油価格引き下げを対ロシア圧力カードとして活用しようとしている。ロシア経済は原油・天然ガス輸出に依存しており、価格下落は戦争継続能力を低下させる可能性がある。トランプ氏は国内での石油・天然ガス生産拡大を容認し、OPECにも価格引き下げを迫っている。ウクライナもロシア産天然ガスの欧州への供給を停止し、ロシアのエネルギー施設への攻撃を強化している。
石油掘削機
原油価格下落はロシアにとって大きな痛手となる。中国は安価なロシア産原油・天然ガスの主要輸入国だが、価格下落は中国の購買意欲を削ぐ可能性がある。パク元大使は、「ロシア経済は非常に厳しい状況にあり、戦後復興も容易ではない。原油価格が大幅に下落すれば、プーチン大統領は戦争費用の調達に苦慮するだろう」と分析する。
欧州の再武装と今後の展望
欧州の再武装の動きも、ロシアにとって中長期的な負担となる。EUは防衛費増額を進めており、これはトランプ大統領の要求とも合致する。EUは国防首脳会議を開催し、防衛産業強化のための投資拡大を議論する。英国もウクライナとの安全保障協定を締結した。
兵士
欧州の再武装は、対露制裁強化と相まって、ロシアへの圧力を高めるだろう。トランプ大統領は「力による平和」を主張し、プーチン大統領も同じ理念を持つ。米国と欧州がウクライナへの支援を強化し、プーチン大統領に戦争継続よりも停戦が有利だと認識させることができるかが、和平交渉の成否を左右するだろう。