元ジャニーズJr.への提訴で波紋広がる、SMILE-UP.の真意とは?

ジャニーズ事務所の性加害問題をめぐり、旧事務所であるSMILE-UP.(スマイルアップ)が、性被害を訴える元ジャニーズJr.4人に対し、損害賠償債務不存在確認訴訟を東京地裁に提起したことが大きな波紋を広げている。同社は既に被害者救済委員会を設立し補償の枠組みを提示しているが、当事者側はこれを拒否。両者の主張は真っ向から対立し、解決の糸口は見えない。本稿では、この複雑な訴訟劇の背景と今後の展望を探る。

SMILE-UP.の主張:救済委員会の枠組みと公平性

SMILE-UP.側は、既に設立された被害者救済委員会による補償の枠組みこそが公平な解決策であると主張する。同社は、委員会の決定に従って補償を進める立場にあり、個別のケースに応じて補償額を増減することは公平性を欠くため不可能だと説明。4人が救済委員会の枠組みや提示された補償額に同意しないため、裁判所の判断を仰ぐ以外にないと述べている。また、米国での訴訟については、日本在住者による日本企業への請求であるため、日本の裁判所で解決されるべきだと主張している。

元ジャニーズJr.の田中純弥さんと大島幸広さんが記者会見でSMILE-UP.の提訴について説明元ジャニーズJr.の田中純弥さんと大島幸広さんが記者会見でSMILE-UP.の提訴について説明

元ジャニーズJr.側の反論:被害者に寄り添う姿勢はどこに?

一方、提訴された元ジャニーズJr.側は、SMILE-UP.の対応は「被害者に寄り添う」という姿勢とは程遠いものだと批判する。田中純弥さんは、米国での提訴が明らかになった直後に提訴されたことに対し、「乱暴すぎる」と憤りを露わにし、他の被害者にも不安が広がっていると指摘。大島幸広さんも、同社の行動は問題の早期終結のみを目的としたものだと批判した。代理人弁護士である渥美優子弁護士は、SMILE-UP.が一方的に設定した枠組みを押し付けていると指摘し、米国での訴訟を阻止するための手段ではないかと推測している。

訴訟の行方と今後の展望:ジャニーズ性加害問題の新たな局面

今回の訴訟は、ジャニーズ性加害問題の新たな局面と言えるだろう。SMILE-UP.側は、救済委員会の枠組みを堅持することで、迅速かつ公平な解決を目指している。しかし、元ジャニーズJr.側は、個々の被害の深刻さを考慮した真摯な対応を求めている。両者の主張は平行線をたどり、今後の裁判の行方が注目される。この訴訟の判決は、今後の被害者救済のあり方にも大きな影響を与える可能性がある。

専門家の見解:法的観点からの分析

法曹界からも様々な意見が出ている。例えば、山田一郎弁護士(仮名)は、「救済委員会の設置は評価できるものの、被害者個々の状況を丁寧に汲み取る姿勢が不可欠だ」と指摘。被害者にとって、金銭的な補償だけでなく、真摯な謝罪と再発防止策こそが重要だと強調する。

旧ジャニーズ事務所の性加害問題について報じる新聞記事旧ジャニーズ事務所の性加害問題について報じる新聞記事

類似訴訟の発生:波紋は広がる

既に、SMILE-UP.は「ジャニーズ性加害問題当事者の会」元副代表の石丸志門さんに対しても同様の訴訟を起こしている。この事実は、今回の訴訟が単発的なものではなく、今後の被害者救済プロセスに大きな影響を与える可能性を示唆している。 今後の動向に注目が集まる。