失語症。脳梗塞などの後遺症で、言葉でのコミュニケーションが困難になるこの症状は、患者だけでなく、その家族にも大きな影響を与えます。この記事では、滋賀県在住の北川さん親子が失語症とどのように向き合っているのか、そして、現状の支援体制について迫ります。
言葉を失った息子と、母自身の障害
北川千恵美さん(61歳)は、31歳の時に交通事故で高次脳機能障害を負い、左耳の聴力も低下しました。記憶障害やパニック発作など、日常生活にも様々な困難を抱えながら、息子・祐也さん(41歳)を育ててきました。
そして4年前、祐也さんが脳梗塞で倒れ、失語症と高次脳機能障害を発症。言葉を失い、性格も変わってしまった祐也さんと向き合う北川さんの生活は、「しんどいどころではない」と語ります。
alt 失語症と高次脳機能障害を抱える息子と向き合う北川さん
失語症支援の現状と、母子の葛藤
北川さんは、祐也さんのために「失語症者向け意思疎通支援者養成講座」を受講し、県内第1号の支援者として登録されました。しかし、日常的な衝突を回避するための支援体制は十分とは言えず、北川さんは孤独な戦いを強いられています。
「言い合いになった時に、間に入ってくれる人がいれば…」と願う北川さん。滋賀県における失語症支援の現状は、多くの課題を抱えていると言えます。
言葉を超えたコミュニケーション:母子の新たな挑戦
北川さんは、祐也さんのリハビリのために、買い物や役所での手続きを任せるなど、様々な工夫をしています。祐也さんも少しずつ変化を見せ、外出や人と話す機会も増えてきました。
就労継続支援B型事業所に通う祐也さんと、それを支える北川さん。2人の挑戦は、失語症という困難を乗り越え、新たなコミュニケーションの形を模索する希望の光と言えるでしょう。
未来への希望:失語症と共に生きる
失語症は、患者だけでなく、その家族の人生も大きく変えてしまう深刻な症状です。しかし、北川さん親子のように、困難に立ち向かい、新たな道を切り開こうとする人々もいます。
失語症への理解と、支援体制の拡充は、彼らにとって大きな支えとなるでしょう。そして、社会全体でこの問題に向き合うことが、より良い未来へと繋がる第一歩となるはずです。