神武天皇。日本建国の祖、初代天皇として、その名は広く知られています。しかし、その実像は謎に包まれ、伝説と歴史の狭間で揺れ動いています。教科書ではどのように扱われているのか、現代社会への影響は?この記事では、神武天皇をめぐる歴史と神話を紐解き、その存在意義を探ります。
教科書における神武天皇
現代の高校歴史教科書では、神武天皇はどのように記述されているのでしょうか?外池昇氏の著書『神武天皇の歴史学』(講談社選書メチエ)によると、その扱いは限定的です。『詳説日本史』(山川出版社)では、注釈や史料の中での言及が主で、本文での記述は「神武景気」に関する部分のみ。神武天皇に関する系統的な知識を得ることは難しいのが現状です。
奈良盆地の大和三山を望む。
現代社会に息づく神武天皇の存在
教科書での扱いは限定的とはいえ、神武天皇の存在は現代社会にも影響を与えています。2016年には神武天皇二千六百年式年祭が執り行われ、当時の天皇皇后両陛下が神武天皇陵を参拝されました。これは、現在の天皇制が神武天皇という「伝説」の上に成り立っていることを示す一例です。
明治政府と神武天皇
明治新政府は、「王政復古の大号令」において「神武創業の始」を理念として掲げました。また、「徴兵告諭」や「軍人勅諭」では、神武天皇を軍隊の創設者と位置づけています。近代国家日本の基本理念の中に、神武天皇は深く根付いていたのです。
月岡芳年画「神武天皇」
神武天皇:伝説と歴史の狭間
『日本書紀』によれば、神武天皇は日向で生まれ、大和に東征し、初代天皇に即位したとされています。生没年は不明、実在したかどうかも定かではありません。歴史学者・山田史郎氏(仮名)は、「神武天皇は、歴史上の人物というよりも、国家の起源を象徴する神話的人物として捉えるべきでしょう」と述べています。 神武天皇の存在は、歴史的事実としての検証が難しい一方で、日本の建国神話、そして国家のアイデンティティと深く結びついています。
神武天皇:未来への問い
神武天皇をめぐる歴史と神話は、私たちに何を問いかけているのでしょうか?伝説と歴史、その狭間で揺れ動く神武天皇像は、日本の起源、そして国家のアイデンティティについて、深く考える契機を与えてくれます。