首都圏で深刻化する空き家問題。その背景には、高齢化社会の進展と大量相続時代の到来があります。今回は、相続と空き家の関係性、そして今後予想される二次相続の影響について、専門家の見解を交えて解説します。
相続が引き起こす空き家問題の現状
首都圏では、空き家は増加の一途を辿っています。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年の首都圏の個人住宅空き家数は66万900戸。20年前の2003年と比較すると、なんと68.6%も増加しています。東京都では52.4%増、神奈川県は73.9%増、千葉県は77.4%増、埼玉県は82.5%増と、どの都県も増加傾向にあります。
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高齢の単身者が亡くなった場合、賃貸住宅であれば次の入居者が見つかりやすいですが、持ち家の場合はそう簡単にはいきません。相続人は、住む、貸す、売るのいずれかの選択を迫られますが、どの選択肢も選ばなければ、家は空き家になってしまいます。首都圏のような流動性の高い地域でさえ、空き家が増え続けている現状は、住宅供給過剰の深刻さを物語っています。
大量相続時代と二次相続のインパクト
首都圏では、相続件数も増加しています。2000年には21万2000件だった相続発生件数が、2020年には39万2000件と、20年間で84.9%も増加しました。これは、高齢化の進展に伴い、亡くなる方が増えていることを示しています。
そして、今後さらに問題となるのが二次相続です。親の世代から子世代への一次相続に続き、子世代から孫世代への二次相続が発生することで、相続手続きが複雑化し、空き家の増加に拍車がかかると予想されています。例えば、両親のどちらかが亡くなり、実家が空き家になったとします。子供たちがすでに持ち家を持っている場合、実家を相続しても住むことはなく、管理もままならないまま放置される可能性が高くなります。
専門家の見解:二次相続への対策が急務
不動産コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「二次相続への対策が急務だ」と警鐘を鳴らしています。「高齢化が進むにつれて、二次相続はますます増加していくでしょう。相続が発生する前に、家族間で財産の分配について話し合っておくことが重要です。また、空き家を有効活用するための対策、例えば賃貸に出したり、売却したりすることも検討する必要があります。」
今後の展望:空き家問題解決への取り組み
空き家問題は、個人の財産管理だけでなく、地域社会全体にも影響を及ぼします。景観の悪化、防犯上のリスク、地域活力の低下など、様々な問題を引き起こす可能性があります。そのため、国や地方自治体も空き家対策に力を入れており、空き家の活用や解体費用への補助金制度などを設けています。
今後、空き家問題を解決するためには、個人の意識改革と行政の支援、そして地域社会全体での取り組みが不可欠です。相続について家族で話し合う機会を設け、空き家の適切な管理方法を検討することで、将来の空き家問題を軽減できるでしょう。