日本のコメディ界を牽引してきた萩本欽一氏。その笑いの才能は、舞台だけでなくアイドルプロデュースにも発揮され、「イモ欽トリオ」や「CHA-CHA」といった人気グループを輩出しました。実はCHA-CHAの前身「茶々隊」には、後に国民的アイドルグループSMAPとなる木村拓哉氏、草彅剛氏も在籍していたのです。さらに『仮装大賞』では香取慎吾氏と息の合った名コンビぶりを見せ、SMAPとの深い関係性が垣間見えます。本記事では、萩本氏の類まれなるコメディアン育成術とSMAPとの知られざるエピソードに迫ります。
萩本流コメディアン育成の秘訣:「聞いたらおしまい」
萩本氏はどのようにして才能を見出し、育ててきたのでしょうか? 弟子である小堺一機氏の物まねでもお馴染みのフレーズ「聞いたらおしまい」。これは実際に萩本氏が口にする言葉で、その真意はどこにあるのでしょうか。
オーディションで「あなたのお母さんは?」と質問されたとしましょう。一見何気ない質問ですが、実は意図的に曖昧にしているのです。多くの人は「母の何についてですか?」と聞き返してしまうでしょう。しかし、萩本氏曰く、聞き返すのは質問の意図を明確にしたいという表れであり、コメディアンには不向きだといいます。なぜなら、全てを明確にしてしまうと遊び心が失われ、笑いが生まれないからです。
萩本欽一氏のオーディションの様子を想像したイメージ図
曖昧な質問をそのまま受け止め、とっさに何かを答えることができる、少しおっちょこちょいな人こそコメディアンの素質があると萩本氏は考えています。だからこそ、「聞いたらおしまい」なのです。
混乱を楽しむ才能:良いボケ役の条件
「あなたのお母さんは?」と聞かれたら、聞き返すのではなく、「はい、口やかましくて、お節介で、ウンザリするんですが、失恋してションボリしているときに一緒に泣いてくれるような母です」などと、思いつくままに答えるのが良いのです。正解はありません。そして重要なのは、その後の展開です。
萩本氏はそこで終わりにせず、「そんなこと聞いてないの、お母さんの年齢!」と畳みかけます。それでも答え方は同じ。「56、いや57かな。あれ、たぶん、8まではいってません」「結局、いくつなの?」「この際、55ってことで、ひとつよろしく。その方が母も喜びますから」「余計なこと言わなくていいの、年齢を聞いただけなんだから」といった具合に、多少混乱しても臆することなく、会話を続けることが重要なのです。
SMAPとの深い関係:茶々隊から仮装大賞まで
萩本氏とSMAPの繋がりは深く、CHA-CHAの前身である「茶々隊」時代から始まります。当時まだ幼かった木村拓哉氏、草彅剛氏もメンバーとして参加していました。後に『仮装大賞』で香取慎吾氏と共演し、名司会コンビとしてお茶の間を沸かせました。
仮装大賞での萩本欽一氏と香取慎吾氏の軽妙な掛け合いをイメージした写真
このように、萩本氏はコメディ界だけでなく、アイドル界にも大きな影響を与えてきたのです。
萩本欽一:笑いの神様が残したもの
萩本欽一氏は、独自の育成方法で数々のコメディアンを育て上げ、日本の笑いの文化を豊かにしてきました。その哲学は、現代においても多くの示唆を与えてくれます。 「聞いたらおしまい」という言葉は、固定観念にとらわれず、自由な発想で物事に取り組むことの大切さを教えてくれるのではないでしょうか。