古都京都、世界遺産・清水寺。その美しい景観と歴史的建造物は、国内外から多くの観光客を魅了し続けています。しかし、近年その人気ゆえに「オーバーツーリズム」が深刻な問題となっており、地域住民の生活にも影響が出ています。今回は、清水寺周辺の現状と住民の本音に迫ります。
観光客でごった返す清水寺周辺:住民の暮らしへの影響
1月末の平日にも関わらず、清水寺へと続く二年坂や産寧坂は観光客で埋め尽くされていました。すれ違うのも困難なほどの人混みの中、車は徐行しながら人々の間をかき分けて進む様子も見られ、危険な状況も散見されます。特に今年は中国の春節と重なり、中国人観光客の姿も多く見られました。江西省から来た程洪さん(60歳)は、「東京や大阪も有名ですが、京都は特別。嵐山の竹林も訪れたい」と笑顔で語っていました。
alt="清水寺の二年坂や産寧坂を埋め尽くす観光客。人混みの中を車が通り抜ける様子も見られる。"
しかし、賑やかな参道から一歩路地に入ると、そこは住民の生活空間が広がっています。観光客の喧騒とは対照的に、静かな古民家が立ち並ぶ一角も。観光都市・京都の意外な一面を垣間見ることができます。
写真撮影禁止の張り紙:住民の苦悩
一部の古民家では、「写真撮影禁止」の英語表記の張り紙が貼られています。着物レンタルを利用した観光客が、古民家を背景に無断で写真撮影をするケースが増えているためです。近隣に住む39歳の女性は、「私有地への無断侵入はやめてほしい」と訴え、自衛策として張り紙を掲示したとのこと。
古民家を改装した民泊施設の増加や路上駐車の問題も深刻化しています。景観保護の必要性を訴える住民の声を受け、京都市はどのような対策を講じるのでしょうか。
マナー違反:文化と地域への配慮を
オーバーツーリズムに伴い、観光客のマナー違反も問題となっています。高台寺塔頭・岡林院では昨年9月、石橋の欄干が一部破損する被害が発生しました。モミジを撮影しようと橋に寄りかかる観光客が相次いだことが原因とみられています。また、飲みかけのペットボトルが地蔵の横に放置されるなど、心無い行為も後を絶ちません。青山公胤住職(40歳)は、「観光客の方々には、文化や地域住民への配慮を忘れずに楽しんでいただきたい」と語っています。
食べ歩きによるトラブル:店舗への影響
清水坂で100年以上続く清水焼専門店を営む81歳の女性は、食べ歩きによるトラブルに頭を悩ませています。天ぷらを持った手で商品に触れたり、溶けたアイスクリームを落とす外国人観光客もいるそうです。京都の食文化を楽しむことは素晴らしいですが、周囲への配慮も忘れてはなりません。京都の食文化研究家、佐藤美香氏(仮名)は、「食べ歩きを楽しむ際は、ゴミの処理や周囲への配慮を心がけ、京都の美しい街並みを維持するために協力することが大切です」と提言しています。
まとめ:持続可能な観光に向けて
オーバーツーリズムは、観光客と住民双方にとって大きな課題です。観光客は、マナーを守り、地域住民の生活に配慮することが重要です。行政は、観光客誘致と地域住民の生活環境保全のバランスを図る施策を推進していく必要があります。美しい京都を未来に残していくために、皆で協力し、持続可能な観光のあり方を考えていく必要があるのではないでしょうか。