トランプ政権のウクライナ巡る発信、二転三転 停戦交渉は加速の構え


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 「私は現実主義者だ。(停戦交渉に欧州が参加することは)起きないと思う」。ロイター通信によると、米政権のウクライナ・ロシア担当特使のケロッグ氏は15日、開催中のミュンヘン安全保障会議のイベントでこう説明した。

 欧州では米国とロシアが頭越しに停戦交渉を進めることへの警戒感が広がっており、交渉への関与を求めている。ただケロッグ氏には、関係国が多くなれば、交渉がまとめづらくなることへの懸念がある。

 一方、トランプ氏は13日、停戦交渉には「ウクライナやロシア以外の人々も関わるだろう」と説明していた。ケロッグ氏は欧州が参加しないことについて、「(欧州の)利益が考慮されないという意味ではない」とも語ったが、どのような形で欧州の意向が反映されるのかは不明だ。マクロン仏大統領は対応を協議するため、欧州の首脳に非公式会合を呼びかけた。

 また、バンス米副大統領の「発言」を巡っても混乱が生じた。ウォール・ストリート・ジャーナルが14日に報じたインタビューの内容では「経済的な手段も、軍事的手段もある」と発言。ロシアが交渉に誠実に対応しない場合は、米軍のウクライナ派遣も選択肢になるとの見方を示したとの報道だった。

 仮にロシアとの交渉で米軍の派遣を持ち出した場合、ロシア側の相当な反発が予想される。実際に派遣するとなれば、核大国同士が直接向き合うことにもなる。ヘグセス米国防長官は12日、ウクライナの安全を保証するために米軍を派遣することを否定。バンス氏もその後、X(ツイッター)で「発言がねじ曲げられた。米国の利益や安全保障に寄与しない場所で、米軍を危険にさらすべきではない」と主張した。

 米政権からの発信は二転三転しており、停戦に向けた明確な道筋は見えてこない。ただトランプ氏はロシアとウクライナの戦争を「(1月20日の)就任後24時間以内」に解決するなどと豪語してきた経緯がある。停戦が実現しなかったり、交渉が袋小路に陥ったりすれば、自身の威信に関わる。中国への対応や不法移民などの問題に注力するためにも、是が非でも避けたいのが本音とみられる。

 ケロッグ氏は15日、「私は『トランプ時間』で動いている。トランプ氏は今日仕事を頼めば、明日にはなぜ終わっていないのか知りたがる」と明かした。

 米メディア「ポリティコ」によると、ウォルツ大統領補佐官やルビオ国務長官、ウィットコフ中東担当特使が数日以内にサウジアラビアでロシアとウクライナの高官と協議する見通しだ。ブルームバーグ通信は、早ければ今月末にも米露首脳会談が開かれると報じており、地ならしの意味もあるとみられる。【ベルリン五十嵐朋子、ワシントン松井聡】



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