日英両政府の主導で、宇宙開発に携わる事業者を評価する新たな格付け制度が来年春に創設されることが5日、分かった。宇宙で急増する人工衛星の破片などのスペースデブリ(宇宙ごみ)低減を促すため、他の衛星との衝突回避機能など低減策に応じて事業者をランク付けする。格付けの高い企業に資金調達や損害保険の面で優遇することで国際社会のデブリ対策を底上げし、宇宙空間の安定利用に貢献したい考えだ。
新制度は、世界経済フォーラム(WEF)が設ける。日英は参加国を増やすため、WEFで制度設計の議論を主導してきた。欧州の航空機大手エアバスや米ロッキード・マーチン社など約40社が採用を検討している。
評価は欧州宇宙機関(ESA)や米マサチューセッツ工科大学(MIT)などで構成する第三者機関が行う。衛星を大気圏に突入させて消滅させる機能や、デブリ除去サービスへの加入の有無などが評価対象になる見通しだ。
宇宙保険世界最大手の中東の保険会社もWEFでの議論に加わっており、企業イメージの向上や宇宙保険料率の引き下げなどの効果が期待される。
国内では経済産業省が9月下旬に勉強会を立ち上げ、デブリ除去技術開発に取り組むアストロスケール(東京都墨田区)や大手保険会社などから評価基準に関する要望を聞き取った。WEFが正式決定する基準に日本の技術や知見を反映させたい考えだ。
宇宙空間での米中露の覇権争いの激化に伴い、デブリも急増している。宇宙空間では地球の軌道上に直径10センチ以上のデブリが2万3千個以上漂っており、秒速7~8キロメートルの超高速で移動している。人工衛星と衝突すれば故障や破壊を起こす。宇宙の安定利用に関する国際ガイドラインはあるが罰則規定がなく、デブリ低減は急務となっている。
安倍晋三首相と英国のメイ首相(当時)は2017年8月、日英産業政策対話の新設で合意。同年末、日英両政府は宇宙ゴミ対策の協力覚書(MOU)「日英宇宙デブリ産業イニシアチブ」に署名している。