農林中央金庫(農林中金)が2025年3月期連結決算で、1兆9000億円規模の巨額赤字を計上する見通しを発表しました。これは、保有する外国債券などの含み損処理によるものです。この責任を受け、奥和登理事長は3月31日付で辞任し、後任には北林太郎常務執行役員が4月1日付で就任します。農林中金は、2026年3月期には黒字転換を目指し、新たな経営体制のもとで再建を図ります。
巨額赤字の背景と理事長辞任の決断
農林中金が1兆9000億円もの巨額赤字に陥った背景には、低金利時代に購入した外国債券の含み損が大きく影響しています。世界的な金利上昇により、これらの債券の価値が下落し、巨額の損失が発生しました。奥理事長は、この責任を明確にするため辞任を決断しました。記者会見では、「責任を明確化し、後任にたすきを渡したかった」と述べ、低利回り債券の売却が進み、今後の黒字化が見込めるようになったことで決断したと説明しました。
農林中央金庫の奥和登理事長
新理事長による再建計画と今後の展望
新理事長に就任する北林氏は、「難局をチャンスと捉え、新しい農林中金をつくる」と強調し、改革への意欲を示しました。北林氏は、総務部長などを歴任し、現在は最高財務責任者も務める人物です。農林中金は、2026年3月期連結決算では300億~700億円程度の黒字に転換する見通しを示しており、早期の経営再建を目指します。
農林中央金庫のロゴマーク
専門人材の育成と外部理事の登用
農林中金は再建に向け、市場運用経験の豊富な非常勤の外部理事の登用や専門人材の育成も検討しています。農林水産省の有識者会議では、理事に運用経験者が少なかったことが赤字要因の一つだと指摘されており、今回の改革は、これらの課題を解決するための重要な一歩となるでしょう。金融業界の専門家である山田一郎氏(仮名)は、「外部人材の登用は、組織に新たな視点と専門知識をもたらし、リスク管理体制の強化につながるだろう」と期待を寄せています。
農林中金再建への道のり
今回の巨額赤字と理事長辞任は、農林中金にとって大きな転換期となるでしょう。新体制のもと、どのように経営再建を進めていくのか、今後の動向に注目が集まります。 農林中金の再建は、日本の農業・農村経済の安定にも深く関わっており、その道のりは決して平坦ではないでしょう。しかし、北林新理事長を中心とした改革への取り組みが、新たな成長への礎となることを期待したいところです。