世界的にも異例すぎる「硫黄島」の厳しい実態…なぜいまだに島民は帰れないままなのか


【写真】日本兵1万人が行方不明、「硫黄島の驚きの光景…」

民間人の上陸が原則禁止された硫黄島に4度上陸し、日米の機密文書も徹底調査したノンフィクション『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』が13刷ベストセラーとなっている。

ふだん本を読まない人にも届き、「イッキ読みした」「熱意に胸打たれた」「泣いた」という読者の声も多く寄せられている。

世界でも唯一無二の全島疎開が続く島

僕の硫黄島取材は、石原氏が著書『硫黄島 国策に翻弄された130年』(中公新書)を出版した2019年以前と以後では大きく変わる。以前は遺骨問題ばかりに向けてきた僕の探究は、同著との出会いによって島民未帰還問題にも広がることになった。

石原氏によると、戦局悪化に伴う国の疎開命令により、本土疎開を強いられた島民1000人超の戦後は、次のような経過を辿った。

小笠原諸島の施政権の返還後、父島と母島の旧島民は帰島を認められた一方で、硫黄島の旧島民は許可されなかった。硫黄島の旧島民たちは1969年、硫黄島帰島促進協議会を結成し、国に再居住を求める運動を本格化した。

しかし、国は翌1970年、その要求を無視して、硫黄島の復興の実施を除外した小笠原諸島復興計画(後に振興計画に名称変更)を決定した。帰島運動は一世の高齢化に伴い、次第に下火になっていった。

そんな中で迎えた1984年、国土庁の審議会は火山活動などを理由に「硫黄島での一般住民の居住は困難である」との答申を出した。これにより国は同計画の延長を決定。先の大戦での全島疎開が解除されない、世界でも無二とされる異常な状態は、現在もなお続いている。



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