愛知県、特に津島市、稲沢市、あま市といった西部地域では、在日トルコ人に次いでクルド人コミュニティが成長を遂げています。埼玉県から移住してきたクルド人たちは、解体業界を中心に新たな労働力として活躍し、地域社会に溶け込もうと努力しています。
クルド人の流入と解体業界への貢献
愛知県では、トルコ人経営の解体下請け業者が日本企業から仕事を受注するケースが多く見られます。しかし、近年はトルコ人労働者の減少や円安の影響もあり、人手不足が深刻化しています。そこで、クルド人労働者がその穴を埋め、トルコ人さえも敬遠するような重労働も積極的に引き受けることで、業界を支えています。今後の岐阜県庁旧庁舎解体工事など、大規模プロジェクトでも彼らの活躍が期待されています。
解体工事の様子
クルド人若者の声:出自を明かすことへの葛藤と希望
2024年から愛知県犬山市の解体業者で働くクルド人男性(21歳)は、匿名を条件に取材に応じてくれました。彼は先輩クルド人に誘われて埼玉県から移住し、正規の在留資格も保有しています。しかし、メディアで報道されるクルド人に関するネガティブなイメージから、自身の出自を明かすことに躊躇しているといいます。一方で、職場のトルコ人との良好な関係を築き、いつか胸を張って「クルド人」と言えるようになりたいと願っています。
イスラム教を通じた共存:津島アヤソフィヤジャーミィの役割
多くのクルド人とトルコ人に共通するイスラム教の信仰は、彼らを結びつける重要な要素です。津島市に設立されたモスク「津島アヤソフィヤジャーミィ」は、彼らの交流の場となっています。ここでは国籍や民族の違いを超えて、互いの文化や習慣を理解し、親睦を深めています。モスク代表のセイタリオル・レカビ氏は、モスクがムスリムだけでなく、地域住民全体の交流拠点となることを願っています。
モスクで集う人々
多文化共生社会への道:相互理解と尊重の重要性
愛知県におけるクルド人コミュニティの成長は、日本社会の多様化を象徴する一つの現象です。異なる文化や背景を持つ人々が共存していくためには、互いを理解し、尊重することが不可欠です。クルド人労働者たちの貢献、そしてモスクを通じた交流は、多文化共生社会の実現に向けた希望の光と言えるでしょう。彼らの存在は、地域社会に新たな活力と可能性をもたらしています。