インド・ジャリア炭田:100年以上燃え続ける地下火災の現状と住民への影響

インド東部ジャルカンド州ダンバードに位置するジャリア炭田。そこは、100年以上もの間、地下で燃え続ける火災という想像を絶する現実を抱えています。乾いた大地から立ち上る炎と煙は、まるで地獄絵図のようです。この記事では、ジャリア炭田の地下火災の現状、その原因、そして住民への影響について掘り下げていきます。

燃え続ける大地:ジャリア炭田の地下火災

altaltジャリア炭田の地下火災:煙が立ち上る様子(インド東部ジャルカンド州ダンバード)

約280平方キロメートルに及ぶ広大なジャリア炭田。インド石炭省の2021年の発表によると、火災発生地点は27カ所、影響を受けている地域は1.8平方キロメートルにも及ぶとのことです。住民の権利擁護団体「ジャリア炭田を救う委員会」のラジブ・シャルマ代表は、「地獄で生きているようなものだ」と現状を訴えています。

地下火災による深刻な被害:地盤崩壊と住民の恐怖

この地下火災は、地盤にも深刻な影響を与えています。火災によって地下の一部が空洞化し、地盤崩壊が発生。これまでに複数の住民が死傷しており、2017年5月には地盤崩壊によって親子が命を落とす痛ましい事故も発生しました(ヒンドゥスタン・タイムズ報道)。 地下火災の影響地域に住むシャンティ・デビさんは、「家の下の地盤が崩れて炎にのまれてしまったらと思うと、恐ろしい」と不安な日々を語っています。

地下火災の原因:1世紀にわたる謎

altaltジャリア炭田の地下火災:燃え続ける地面

ジャリア炭田での石炭採掘は1890年代に民間業者によって開始され、1970年代に国有化されました。地下火災が初めて確認されたのは1916年。原因は未だ解明されていませんが、採掘後の炭鉱の放置が発火につながった可能性などが指摘されています。インド石炭省は、国有化以前の利益追求型の採掘手法が、安全や環境への配慮を欠いたものであり、土壌劣化、地盤沈下、そして炭鉱火災などの社会環境問題を引き起こしたと認めています。

火災鎮火への取り組みと課題

これまで、不活性ガス注入などの消火活動が行われてきましたが、火災を完全に鎮火するには至っていません。現在、当局は影響地域からの住民移転と並行して、石炭の採掘を急ピッチで進めています。インド工科大学ダンバード校のディーラジ・クマール教授は、「石炭を採掘し尽くせば、火災もなくなるだろう」と述べています。

未来への展望:ジャリア炭田の再生に向けて

長年にわたる地下火災は、ジャリア炭田の住民の生活と環境に深刻な影響を与え続けています。火災の鎮火、住民の安全確保、そして環境の回復は喫緊の課題です。関係機関による効果的な対策と国際社会の協力が不可欠であり、ジャリア炭田の再生に向けて、より一層の努力が求められています。