ウクライナ侵攻3年:欧州首脳陣の焦燥と米欧間の亀裂深まる

ウクライナ侵攻から3年。混迷を極める国際情勢の中、欧州首脳陣の焦燥感は募るばかりです。果たして、欧州の安全保障はどうなるのでしょうか?本記事では、スターマー英首相やメルツ独首相候補の発言を基に、揺らぐ欧州の現状と米欧関係の行方を探ります。

スターマー英首相、国防費増額を表明:ロシアの脅威に備えよ

英国のスターマー首相は、冷戦終結以来最大の国防費増額を発表しました。GDP比2.5%という目標を3年前倒しし、2027年までに達成する計画です。さらに、次の議会ではGDP比3%への引き上げも視野に入れています。

スターマー首相は「ベルリンの壁崩壊当時、ロシアの戦車が再び欧州を走り回るとは想像もできなかった」と語り、プーチン大統領の攻撃性がウクライナだけに留まらないことへの強い危機感を表明しました。ロシアによる偵察船や戦闘機による威嚇行為、NHSへのサイバー攻撃など、英国への脅威は現実のものとなっています。

スターマー英首相スターマー英首相

この国防費増額の財源は、ODA予算の削減によって賄われる予定です。財政状況が許せばODA予算を元に戻すとしていますが、実現性は不透明です。高騰する長期金利への懸念もあり、英国政府は厳しい舵取りを迫られています。

メルツ独首相候補、米国の欧州軽視を批判:自立への道模索

ドイツでは、メルツCDU党首が次期首相の座を狙っています。メルツ氏はショルツ首相との連立協議後、SPDとの合意に期待を示しました。しかし、外交・安全保障、移民、経済問題など、課題は山積しています。特に、対米関係は喫緊の課題です。

大西洋主義者として知られるメルツ氏でさえ、「米国は欧州の運命を気にかけていない」とトランプ前大統領の発言を引用し、米国の欧州軽視を批判しました。「欧州にとって真夜中まであと5分」と表現し、一刻も早い欧州の強化と米国からの自立を訴えています。

メルツ氏は、トランプ氏が欧州やウクライナの意向を無視してロシアと取引しようとしていることを強く懸念しています。このような動きは、ウクライナと欧州にとって到底受け入れられないものです。

プーチン大統領とトランプ前大統領プーチン大統領とトランプ前大統領

ドイツはNATOの目標であるGDP比2%の国防費をようやく達成しましたが、トランプ氏が求める5%には遠く及びません。報道によれば、ドイツは1000億ユーロの国防基金に2000億ユーロを積み増す計画です。

マクロン仏大統領、米欧間の溝埋めに奔走:ブロマンス復活はなるか

マクロン仏大統領は、トランプ氏とゼレンスキー大統領との3者会談を実現させ、かつての「ブロマンス」復活を目指しました。しかし、ウクライナ戦争に対する米国の姿勢の変化は明らかで、米欧間の溝を埋めることは容易ではありません。

ロシアのウクライナ侵攻3年を迎え、国際社会は岐路に立たされています。欧州首脳陣の焦燥と米欧間の亀裂は深まるばかりです。今後の世界情勢の行方に、ますます目が離せません。