和解とは何か?韓国ソウル大学教授が問いかける、真の和解への道

韓国では「和解」という言葉が軽々しく使われているのではないか――。ソウル大学日本研究所のナム・ギジョン所長職務代理は、そう警鐘を鳴らす。来る7月14日から18日にかけて、ソウル大学で開催される国際和解学会(IARS)ソウル大会の準備を進めるナム教授に、jp24h.comが独占インタビューを行った。

韓国社会における和解の現状、そして真に目指すべき和解の姿とは。国際和解学会ソウル大会への期待と共に、その深淵なる世界を探る。

和解学とは?破壊された関係を修復する探求

和解学(Reconciliation studies)とは、紛争や暴力によって破壊された人間関係の修復過程を研究する学問分野である。平和学の一分野として、対立解消学や記憶学とも密接に関連している。

ナム教授は、ウクライナやガザ地区などの紛争地域を例に挙げ、「停戦は和解への第一歩に過ぎない。和解のプロセスを深く考えずに停戦が成立しても、暴力の連鎖は断ち切れない」と指摘する。

ナム・ギジョン教授インタビューの様子ナム・ギジョン教授インタビューの様子

国際和解学会ソウル大会に寄せる期待

2020年に設立された国際和解学会は、毎年世界各地で大会を開催している。ソウル大会は6回目となるが、アジア地域での開催は初めてだ。

開催地の選定理由について、ナム教授は「韓日関係をはじめ、様々な和解課題を抱える韓国が最適だと判断された」と語る。シアル財団の支援により、大会開催が実現したという。

ナム・ギジョン教授ナム・ギジョン教授

大会では、世界中から集まった研究者約30名が和解をテーマに様々な発表を行う予定だ。韓国からはシアル財団、金大中学術院、対話文化アカデミーなど、多様な団体が参加する。日本からも東芝国際交流財団、渥美国際交流財団などの参加が見込まれている。

韓国における和解の課題:軽視される「過程」

ナム教授は、韓国社会では「和解」という言葉が安易に使われすぎていると警鐘を鳴らす。「韓日関係、南北関係、済州4・3事件、5・18光州民主化運動など、韓国には多くの和解課題が存在する。しかし、和解とは、加害者の責任追及や処罰、そして再発防止策の構築を含む、複雑で困難なプロセスである」と強調する。

映画『シークレット・サンシャイン』や『帝国の慰安婦』を例に挙げ、和解の難しさ、そして和解できない可能性についても議論する必要があると指摘する。

尹政権の対日外交:和解への道を閉ざすのか

革新系日本専門家としても知られるナム教授は、尹錫悦政権の対日外交について、「安倍談話(2015年)の論理を受け入れたことで、和解への道を閉ざしてしまった」と批判する。

一方で、韓日パートナーシップ宣言2.0プロジェクトが中断されたことは、菅談話(2010年)に基づいた議論を再開する機会となる可能性があると指摘する。「韓日関係が対称的かつ水平的な関係へと発展するためには、過去の植民地支配の不当性を認め、溝を埋める努力が必要だ」と語る。

真の和解とは:より良い共同体を目指して

ナム教授は、「真の和解とは、加害者と被害者だけでなく、社会全体がより良い共同体を目指していくプロセスである」と定義する。

それは、時に困難で、時に不可能にさえ思える道程かもしれない。しかし、だからこそ、私たちは和解の真の意味を問い続け、その実現に向けて努力していく必要があるのだ。