ウクライナ紛争の長期化が懸念される中、ドナルド・トランプ前米大統領とウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領の関係性に再び注目が集まっています。かつてゼレンスキー氏を「独裁者」と呼んだトランプ氏が、一転して「敬意」を表する発言をした背景には何があるのでしょうか。本記事では、二人の複雑な関係性と今後の行方を探ります。
トランプ氏、ゼレンスキー氏への「敬意」を表明
2025年2月27日、トランプ前大統領はホワイトハウスで英国のキア・スターマー首相と会談を行いました。その席で、翌日に予定されていたゼレンスキー大統領との会談について言及し、「非常に良い会談ができると思う。本当にうまくやっていけるだろう」「彼のことを大いに尊敬している」と述べ、ゼレンスキー氏への敬意を表明しました。
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この発言は、これまでのトランプ氏の姿勢とは大きく異なるものです。長年、米国によるウクライナへの巨額の支援を批判してきたトランプ氏が、なぜこのような発言に至ったのか、様々な憶測が飛び交っています。
ウクライナの鉱物資源権益をめぐる「ディール」
トランプ氏の態度変化の背景には、ウクライナの鉱物資源権益をめぐる合意文書の存在が指摘されています。この「ディール」によって、ウクライナの鉱物資源権益の多くが米国に付与されることになると言われています。
トランプ氏は、この合意を米国の対ウクライナ支援に対する「補償」と位置づけているようです。会見では、「われわれ(米国)は彼(ゼレンスキー氏)に多くの装備と多額の資金を与えたが、非常に勇敢に戦ったのは彼ら(ウクライナ国民)だ」「装備は誰かが使わなければならない。その意味で彼ら(ウクライナ国民)は非常に勇敢だった」と述べています。
過去の「独裁者」発言を撤回?
今月初め、トランプ氏はロシアのプーチン大統領とウクライナ問題について会談を行いました。この会談は多くの欧州同盟諸国を驚かせ、ゼレンスキー氏からも批判の声が上がりました。これに対し、トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」でゼレンスキー氏を「独裁者」と呼び、物議を醸しました。
しかし、今回の会見でこの発言について問われると、「そんなことを言ったか? 私がそんなことを言っただなんて信じられない」と回答。過去の「独裁者」発言を撤回したとも取れる発言をしています。
専門家の見解
国際政治アナリストの佐藤一郎氏は、トランプ氏の今回の発言について、「ウクライナの鉱物資源権益獲得を優先した、政治的なパフォーマンスの可能性が高い」と指摘しています。「過去の『独裁者』発言と矛盾する今回の『敬意』表明は、経済的な利益を最優先するトランプ氏らしい行動と言えるでしょう。」
今後の行方
トランプ氏とゼレンスキー氏の関係、そしてウクライナ紛争の行方は、依然として不透明です。今後の動向に注目が集まります。