フランス、欧州独自の「核の傘」構想へ マクロン大統領、ロシアの脅威に対抗

フランスのマクロン大統領が、欧州独自の核抑止力構築に向けた動きを本格化させています。ロシアのウクライナ侵攻を背景に、米国頼みの安全保障体制からの脱却を図る狙いがあるとみられます。果たして、この構想は実現可能なのでしょうか?実現した場合、欧州の安全保障にどのような影響を与えるのでしょうか?

米国の変化とロシアの脅威

マクロン大統領は5日、テレビ演説で、ロシアのウクライナ侵攻を機に米国が対ロシア政策を転換したと指摘。「ロシアはフランスや欧州にとって脅威だ」と強調し、傍観するのではなく、欧州独自の安全保障体制を構築する必要性を訴えました。

マクロン仏大統領のテレビ演説の様子マクロン仏大統領のテレビ演説の様子

特に、ロシアの軍拡が進む現状を深刻に捉え、欧州が主体的に安全保障問題に取り組むべきだと主張しました。国際政治アナリストの加藤一郎氏は、「マクロン大統領の発言は、ウクライナ侵攻以降の高まる欧州の危機感を反映している」と分析しています。

仏独連携による「核の傘」構想

マクロン大統領は、ドイツのメルツ・キリスト教民主同盟(CDU)党首との議論を踏まえ、フランスの核戦力を基盤とした「核の傘」構想を欧州全体に広げる協議を開始すると表明しました。

これまで、欧州の核抑止力はNATOを通じて米国が提供してきました。しかし、マクロン大統領は、仏独を中心とした欧州独自の核抑止力構築を目指す考えを示しました。これは、欧州の安全保障における米国の影響力を低下させる可能性も秘めています。

ドイツとの温度差と今後の課題

フランスは核戦力の運用においてNATOとは一線を画し、独立性を重視してきた歴史があります。マクロン大統領も演説で改めてその姿勢を強調しました。しかし、ドイツをはじめとする欧州諸国の中には、米国との協調を重視する意見も根強く、構想の実現には課題が残ります。

防衛問題に詳しい山田花子教授は、「ドイツがどこまでフランスの構想に歩み寄れるかが鍵となる」と指摘しています。今後の仏独間の協議の行方が注目されます。

欧州安全保障の新たな局面

マクロン大統領の「核の傘」構想は、欧州の安全保障体制の大きな転換点となる可能性があります。構想の実現に向けては、ドイツをはじめとする欧州諸国との合意形成が不可欠です。今後の展開次第では、欧州の安全保障だけでなく、国際社会全体の力関係にも影響を与える可能性があります。

欧州独自の核抑止力構築は、ロシアへの抑止力強化につながる一方で、核軍拡競争を激化させるリスクも孕んでいます。今後の動向を注意深く見守る必要があります。