吉祥寺、病院不足の深刻化で住民不安 住みたい街の影に医療崩壊の危機?

吉祥寺は、住みたい街ランキングで常に上位に位置する人気の街です。しかし、その華やかなイメージの裏側で、深刻な病院不足が住民を不安に陥れている現状をご存知でしょうか。今回は、吉祥寺における病院減少の実態と、住民生活への影響について掘り下げていきます。

住みやすさの影に潜む医療危機

おしゃれな街並み、充実した商業施設、緑豊かな井の頭公園…吉祥寺の魅力は尽きません。大東建託の「街の住みここち&住みたい街ランキング2024」でも6年連続トップに輝き、その人気は揺るぎないものとなっています。しかし、この住みやすさの裏側で、医療体制の脆弱化が進んでいるという深刻な問題が浮き彫りになっています。

吉祥寺南病院の外観吉祥寺南病院の外観

10年ほど前から続く病院の閉鎖・縮小は、高齢化が進む地域住民にとって大きな不安材料となっています。85歳の吉岡諒子さんは、「高齢者にとって、身近な病院の存在は心の支え。今は遠くの病院まで行かなければならず、不便を感じている」と語ります。

次々と姿を消す病院、救急医療の空白も

2014年には松井外科病院が救急・入院機能を停止、その後も水口病院、森本病院と、地域医療を支えてきた病院が次々と閉鎖に追い込まれています。特に、吉祥寺地区で唯一の二次救急医療機関だった吉祥寺南病院の診療休止は、地域住民に大きな衝撃を与えました。

地域住民の声:突然の診療休止で途方に暮れる

夫をがんで亡くした吉岡さんは、生前、吉祥寺南病院の迅速で温かい対応に助けられた経験を語ります。「先生方の親切な対応には本当に感謝していた。夫が腹痛を訴えた際も、すぐに診ていただけた」と当時を振り返ります。

75歳の田中邦忠さんも、心臓病の手術後、吉祥寺南病院で定期的に診察を受けていました。「CTやMRIなどの設備も充実しており、ほとんどの診療はここで済ませることができた。診療休止で新しい病院を探さなければならず、途方に暮れている」と不安を口にします。二次救急医療機関である武蔵野赤十字病院は、三次救急を担う病院であり、一般的な診療で気軽に受診できる病院ではないため、代替となる病院探しは容易ではありません。

病院経営の苦境、老朽化対策の遅れ

病院の閉鎖・縮小の背景には、経営悪化や老朽化した施設の建て替え費用不足など、様々な要因が絡み合っています。医療費抑制政策や医師不足なども、病院経営を圧迫する一因となっています。

今後の展望:地域医療を守るために

吉祥寺における病院不足は、高齢化社会における大きな課題です。地域医療を守るためには、行政、医療機関、住民が一体となって、持続可能な医療体制の構築に取り組む必要があります。行政による財政支援、医療連携の強化、地域住民による病院利用の促進など、多角的な対策が求められています。

この問題は吉祥寺に限ったことではなく、全国各地で同様の危機が迫っています。私たちは、地域医療の重要性を改めて認識し、未来に向けてより良い医療環境を築いていく必要があるのではないでしょうか。