一斉休校から5年:子どもたちの心に何が残ったのか?【コロナ禍の爪痕】

2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、突如として全国一斉休校が実施されました。当時、感染拡大防止策として不可欠とされたこの措置ですが、5年が経過した今、子どもたちへの影響が改めて問われています。本記事では、一斉休校が子どもたちの心にどのような爪痕を残したのか、教育現場の声や専門家の意見を交えながら探っていきます。

突然の休校要請:混乱と戸惑いの渦中

2020年2月27日、安倍晋三首相(当時)は全国の小中高校、特別支援学校に対し、3月2日から春休みまでの臨時休校を要請しました。「感染リスクにあらかじめ備える」ためとされたこの措置は、児童・生徒、保護者、そして教育現場に大きな混乱と戸惑いをもたらしました。休校期間は自治体によって異なりましたが、多くの学校で3ヶ月近くもの長期に及びました。

2020年2月27日、安倍晋三首相(当時)による休校要請の様子2020年2月27日、安倍晋三首相(当時)による休校要請の様子

当時の報道やアンケート調査からは、子どもたちの「友達と遊びたい」「先生に会いたい」といった切実な声、保護者の生活への不安、そして教職員の成績評価や卒業式実施への懸念など、様々な苦悩が浮き彫りになっています。

長期休校が生んだ影:不登校の増加

一見、コロナ禍以前の日常を取り戻したかに見える学校現場ですが、一斉休校を境に子どもたちに変化が現れたという指摘も少なくありません。中でも深刻な問題として挙げられるのが、不登校の増加です。

コロナ禍の教室。マスク着用が必須となり、子どもたちの会話も控えめになった。コロナ禍の教室。マスク着用が必須となり、子どもたちの会話も控えめになった。

文部科学事務次官を務めた前川喜平氏は、一斉休校は子どもたちの学習権や生活権を侵害し、貴重な学校生活の時間を奪ったと断じています。成長期の子どもにとって、数ヶ月間の休校は大人にとっての数年間に匹敵するほどの大きな変化をもたらす可能性があります。失われた学習機会や友人との交流の時間は、金銭では決して埋め合わせることができないのです。

専門家の見解:子どもの心に寄り添うことの重要性

教育心理学の専門家である佐藤先生(仮名)は、「コロナ禍の一斉休校は、子どもたちの社会性や情緒の発達に大きな影響を与えた可能性がある」と指摘します。「学校は単に知識を学ぶ場ではなく、友達との関係を築き、社会性を育む場でもある。長期の休校によって、コミュニケーション能力の低下や孤立感、不安感などを抱える子どもが増えていることが懸念される。」

未来への課題:コロナ禍の教訓を活かすために

一斉休校から5年。私たちはコロナ禍の経験から何を学び、未来に活かすべきなのでしょうか。子どもたちの心に寄り添い、彼らが健やかに成長できるよう、社会全体で支えていくことが重要です。学校現場だけでなく、家庭や地域社会が連携し、子どもたちの学習機会の保障、心のケア、社会性の育成に力を入れていく必要があるでしょう。