東日本大震災以降、地震や火山噴火の脅威を改めて認識させられる出来事が続いています。災害から身を守るためには、地学の知識が不可欠です。この記事では、京都大学名誉教授 鎌田浩毅氏の著書『大人のための地学の教室』を参考に、火山噴火のメカニズムや溶岩流、火砕流の違い、そしてその脅威について分かりやすく解説します。
溶岩流と火砕流:何が違う?
火山噴火でよく耳にする「溶岩流」と「火砕流」。名前は似ていますが、その性質は大きく異なります。マグマが液体として火口から流れ出すのが「溶岩流」。冷え固まると溶岩となります。一方、「火砕流」は高温の火山ガスや火山灰、軽石などが一体となって高速で山腹を流れ下る現象です。
溶岩、火山灰、火山弾、噴石…様々な噴出物
マグマが空中に噴き上がり、冷え固まってバラバラに降ってくるのが「火山灰」。粒が大きい場合は「火山弾」と呼ばれます。また、火口付近の古い岩石が噴火の勢いで吹き飛ばされる現象、あるいはその岩石自体を「噴石」と言います。火山弾と噴石は時速100kmを超える速度で飛んでくるため、非常に危険です。
火砕流の恐るべき破壊力
火砕流は、その高温、高速、そして粉体流という性質から、極めて危険な現象です。
高温
火砕流の温度は600~800度にも達します。阿蘇山の火砕流では880度を記録した例も。1991年の雲仙普賢岳の噴火では、600度の火砕流が観測され、周辺の生物に壊滅的な被害をもたらしました。
1991年の雲仙普賢岳噴火
高速
火砕流は最大で時速100kmに達すると推定されています。雲仙普賢岳の噴火では時速60kmが観測されましたが、これは比較的小規模な噴火であったため。過去の阿蘇山や鹿児島湾の火砕流はさらに大規模だったと考えられており、時速100kmに達していた可能性があります。
粉体流
火砕流は、周りの空気や水分を取り込みながら「粉体流」と呼ばれる状態になります。粉体流は流体力学の分野で知られる現象で、気体と固体の微粒子が混ざり合った流れです。この性質により、火砕流は地形に沿って広範囲に広がり、甚大な被害をもたらします。
過去の巨大火砕流:九州を焼き尽くした阿蘇4
過去の日本列島では、想像を絶する規模の火砕流が発生しています。例えば、鹿児島湾の入戸火砕流は南九州全域を覆い尽くしました。また、阿蘇4火砕流は九州の北半分を焼き尽くしただけでなく、海を越えて山口県にまで到達しました。
火山ガス:目に見えない脅威
火山噴火に伴い、火山ガスも発生します。火山ガスは主に水蒸気ですが、硫黄やフッ素、塩素など人体に有害な物質も含んでいます。温泉地の硫黄の臭いも、マグマに含まれる硫黄が原因です。
火山噴火から身を守るために
火山噴火は、私たちの生活に大きな影響を与える自然災害です。溶岩流や火砕流、火山灰、火山ガスなど、様々な危険が伴います。日頃からハザードマップを確認し、避難経路や避難場所を把握しておくことが重要です。また、自治体からの情報に注意し、適切な行動をとるようにしましょう。
専門家である火山学者の田中健一氏(仮名)は、「火山噴火は予測が難しい現象ですが、過去の噴火履歴や地殻変動などを監視することで、ある程度の予測は可能です。日頃から防災意識を高め、いざという時に備えておくことが大切です。」と警鐘を鳴らしています。