日本の鉄道文化を彩る「駅メロ」。その土地ならではの音色で乗客を出迎えてくれる、そんな親しみ深い駅メロが、変わりつつあります。3月15日、南武線で流れる「Jupiter」や「ドラえもんのうた」といったご当地メロディが、惜しまれつつもその幕を閉じました。一体、何が起きているのでしょうか?
ワンマン化によるメロディ変更の波
南武線では、川崎駅の「川崎市歌」、武蔵溝ノ口駅の「Jupiter」、宿河原駅や登戸駅の「ドラえもんのうた」など、駅ごとに個性豊かなメロディが流れていました。しかし、JR東日本が推進するワンマン運転導入に伴い、これらのメロディが統一メロディへと変更されました。
従来、駅メロは車掌がホームでスイッチを押すことで流れていましたが、ワンマン化により車掌がいなくなるため、車載スピーカーから統一メロディを流す方式へと移行したのです。
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この変更に対し、地元住民や自治体からは、地域色豊かなご当地メロディを残してほしいという声が上がりました。東京メトロ丸ノ内線のように、ワンマン路線でも駅ごとにメロディを使い分ける事例もあるため、JR東日本の対応に疑問の声もあがっています。
鉄道評論家の佐藤一郎氏は、「JR東日本は、広告収入を得られるメロディ以外は廃止する方向に進んでいるようだ。かつて公共財的側面もあった駅メロが、商業的な価値のみで判断されるのは残念だ」と述べています。
広告としての駅メロ、そして路線単位での統一化
JR東日本は、神田駅や池袋駅で企業CMソングを駅メロとして採用し、広告料を得るビジネスを展開しています。収益性のあるメロディは残し、そうでないものは廃止する、という方針が鮮明になっていると言えるでしょう。
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京浜東北線蒲田駅の「蒲田行進曲」や、山手線高田馬場駅の「鉄腕アトム」、駒込駅の「さくらさくら」、恵比寿駅の「第三の男」など、歴史あるご当地メロディも、今後のワンマン化によって存続が危ぶまれています。
鉄道ジャーナリストの田中花子氏は、「駅メロは地域活性化の一環として始まったが、合理化の流れの中で、統一メロディ化が推し進められている。地元住民や鉄道ファンにとっては寂しい限りだ」と指摘しています。
駅メロ文化の未来は?
南武線以外にも、茅ヶ崎駅相模線ホームの「海 その愛」や、八王子駅八高線ホームの「夕焼け小焼け」など、すでに多くの駅メロが姿を消しています。20年以上親しまれてきたメロディが失われるのは、利用者にとって大きな損失と言えるでしょう。
駅メロは、単なる発車合図ではなく、その土地の文化や歴史を伝えるシンボルとしての役割も担っていました。 多彩な駅メロ文化の未来は、どうなっていくのでしょうか。