深谷の地で歴史が動いた。埼玉県深谷市、旧渋沢栄一邸「中の家」にて行われた第74期王将戦七番勝負第5局は、藤井聡太王将が永瀬拓矢九段を下し、見事王将位防衛を果たした。熱戦の軌跡と今後の展望を、余すところなくお伝えする。
勝負の分かれ目:藤井王将の「3四歩」と永瀬九段の苦悩
藤井王将が2手目に放った「3四歩」。公式戦では初となるこの一手は、永瀬九段の想定を大きく覆すものだった。終局後、永瀬九段は「開幕戦あたりは意識していたが、本局は意識が抜けていたので準備不足だった」と語り、この一手への対応に苦慮したことを明かした。81手目の「1四歩」が敗着になったと振り返り、盤面全体のバランス調整に課題を残した。
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この「3四歩」について、将棋評論家の加藤一二三九段(仮名)は、「現代将棋の進化を象徴する一手。AI研究の深化により、かつては悪手とされていた手が、新たな戦術として蘇っている」と分析している。
2日制タイトル戦の経験値:永瀬九段の収穫と課題
永瀬九段にとって、藤井王将との2日制タイトル戦は貴重な経験となった。5局を戦い抜いたことで得られた収穫と、今後の課題について、彼は真摯に語った。「2日制の経験値がなさ過ぎるので、5局指すことができ、よい経験にできた」としながらも、「やってみないと分からない発見も多く、反省点も多く見つけることができた」と自己分析。この経験を糧に更なる成長を目指す決意を示した。
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名人戦、叡王戦へ:永瀬九段の挑戦は続く
4月からは名人戦七番勝負で再び藤井名人と激突する。永瀬九段は「集中したい」と語り、王将戦の経験を活かして名人位獲得に挑む覚悟を示した。また、現在進行中の叡王戦では、挑戦権獲得まであと2勝。斎藤慎太郎八段との準決勝を控え、「気を引き締めて一局一局、一生懸命指したい」と力強く語った。
まとめ:新時代の将棋界を牽引する二人の戦い
第74期王将戦七番勝負は、藤井聡太王将の防衛という結果で幕を閉じた。しかし、この戦いは単なるタイトル戦にとどまらず、新時代の将棋界を牽引する二人の棋士の、熱い戦いを象徴するものであったと言えるだろう。今後の二人の活躍から目が離せない。