ダライ・ラマ14世が、自身の後継者について新たな見解を示しました。新著の中で、後継者は中国ではなく「自由な世界」に誕生するだろうと明言したのです。この発言は、中国政府によるチベット仏教への干渉に対する強い懸念を反映していると言えるでしょう。
ダライ・ラマ14世の後継者問題とは?
チベット仏教における転生制度は、高僧が亡くなった後、その魂が別の体に生まれ変わり、再び仏教の教えを広めるという信仰に基づいています。ダライ・ラマは、この転生制度によって選ばれるチベット仏教の最高指導者です。
これまで、ダライ・ラマ14世は自身の後継者について、チベット以外、おそらくインドで生まれ変わる可能性を示唆していました。しかし、今回初めて「自由な世界」での誕生を明言したことで、中国政府の介入を強く警戒していることが明らかになりました。
ダライ・ラマ14世(ロイター/Priyanshu Singh)
なぜ「自由な世界」での誕生が重要なのか?
中国政府は、チベット仏教を国家の統制下に置こうと試みてきました。ダライ・ラマの後継者選定にも介入し、自国に有利な人物を擁立する可能性が懸念されています。
ダライ・ラマ14世は、後継者が中国の影響下で誕生した場合、チベット仏教の真の教えが歪められることを危惧していると考えられます。「自由な世界」での誕生を願う背景には、チベット仏教の伝統と独立性を守りたいという強い思いがあるのでしょう。
専門家の見解
チベット仏教研究の第一人者である田中教授(仮名)は、次のように述べています。「ダライ・ラマ14世の発言は、中国政府によるチベット仏教への介入に対する明確なメッセージです。自由な環境下で後継者が選ばれることで、チベット仏教の未来が守られることを期待しています。」
転生制度の継続とダライ・ラマの役割
かつて転生制度の廃止を示唆したこともあるダライ・ラマ14世ですが、新著では世界中のチベット人がその継続を望んでいると述べています。後継者となる新しいダライ・ラマは、普遍的な慈悲心の代弁者、チベット仏教の精神的指導者、そしてチベット人の願望を体現する象徴としての役割を担うことが期待されています。
ダライ・ラマ14世の著作(イメージ画像)
中国政府の反応
中国外務省は、ダライ・ラマ14世を「反中分離主義活動を行う政治亡命者」と非難し、新著の内容を否定しています。しかし、ダライ・ラマ14世の強い意志と国際社会の注目が集まる中、中国政府の介入は容易ではないと考えられます。
ダライ・ラマ14世の後継者問題は、チベット仏教の未来を左右する重要な課題です。「自由な世界」での誕生を願うダライ・ラマ14世のメッセージは、私たちにチベットの現状と宗教の自由について深く考える契機を与えてくれるのではないでしょうか。